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パニックになるあの子が怒りをコントロールできるようになるまで②

イライラは発散させて対応しよう。

神奈川県公立小学校教諭 小塚祐爾

以前担任した高学年のAくん。担任してすぐは、こんな子でした。

 休み時間、学級文庫にあるはずのお気に入りの本が見つからないと
  ↓
 (1)近くにある物を投げる
 (2)近くの人を叩く
 (3)物を蹴る
 (4)泣き叫ぶ

 他にも、様々なことで、パニックを起こしていました。
 私はAくんのパニックが少なくなるように、次のように対応しました。

1 パニックは収まるまで待つ
2 イライラの発散方法を決める
3 発散の練習をする
4 自分から発散するように促す
5 パニックにならずに済む言葉を教える

A君についてのおさらい

 前回、「1」についてお伝えしましたので、今回は、「2」「3」についてお伝えします。

2 イライラの発散方法を決める

 前回、パニックを収める方法について書きました。次に、パニックが収まったところで、まず、なぜパニックになったか聞きました。
 Aくんがパニックになる時には、必ず本人なりの理由がありました。
Aくんの場合は、「予定通りにならなかった」「思い通りにならなかった」という理由が多かったです。
その理由を聞き、「それは嫌だったね」「それはイライラするね」と共感してあげるのが大事です。
 その上で、次にパニックになった時、人を叩いたり、物を蹴ったりする代わりにどうするかを決めました。
 例えば「用意してある人形を叩く」とか「紙を破く」とか、色々な方法を提案しました。
 どういう方法が良いかは、その子によって違います。


 大事なのは、色々な方法を提案して、その中から本人が決めるということです。


 Aくんは、自閉症スペクトラム症でしたので、自分が納得しないことには、なかなか取り組みにくいタイプでした。逆に言えば、自分で決めれば実行できる可能性が高まります。そこで、本人が決めることを大事にしました。

3 発散の練習をする

 発散の方法を決めただけでは、次にパニックになった時、うまくいかないだろうと思いました。
 なぜなら、自閉スペクトラム症の子は、見通しがないと不安になるからです。そこで、


 すぐにイライラを発散する練習をしました。


 私が「はい、パニックになったよ!」と言って、パニックになったことを想定して声をかけます。
 そうしてから、一緒にプレイルームに行き「よし、紙をビリビリに破こう!」と言って、Aくんに紙を渡しました。
 紙をビリビリに破いているAくんを見て「よし、上手、いいよ!」と褒めました。
 ひとしきり紙を破かせた後、「次、パニックになったら、このように紙を破りに来ようね」と話しました。
 このような事前の練習は非常に大事でした。言葉だけでの約束ではなく、実際に体験することで、次にどうすればよいか具体的に理解することができるからです。
 この練習が、次にパニックになった時の行動につながりました。

(第3回「パニックになるあの子が怒りをコントロールできるようになるまで③」に続く2024.10.24予定)


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