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小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第37回 【日本で真のインクルーシブは実現できるのか?⑥】

2023年4月より「ささエる」編集長・小嶋悠紀の連載が始まりました!
「ささエる」本格オープンの11月からは毎月第1・3木曜日の更新となりました。メンバーシップ限定記事ですが、第1木曜日はどなたでもお読みいただけます。
今回は第1木曜日ですので、どなたでもお読みいただけます!
(※今回は都合により金曜日公開となりました。)


 前回まで、「Tier2 通常学級内での補足的支援」の中でも「個別支援」「補足的支援」について述べてきた。

 通常学級内での補足的支援を行っても、なかなか伸びない子供、改善しない子供もいる。それでは、そこからいきなりTier3の個別支援へと展開するのだろうか?
 それは違う。それでは支援の接続があまりにも乱暴すぎると感じている。
 しかし、日本の多くの特別支援教育は、このような状況ではないだろうか。
 さらに、「通級指導」というインクルーシブ教育の美談のもとに、「必要な支援を省かれている」状況もある。
 かつて、小学校で特別支援教育Co.として仕事をしていた時に、私は「通常学級内における補足的支援」で改善がなかなか見られない子供たちに「週に1時間程度の介入支援」を行ってきた。
 まず、対象となる子供の決定は、このシリーズでも述べたように、週に1〜2回の全校巡回アセスメントがベースになる。その中でも心配な子供について、担任と協議の上、保護者と支援会議を行い「週1回程度のトレーニング」を提案し、合意をしてもらう。
 その上で、介入支援を行う。
ちなみに、介入支援は、管理職に特別支援学級の子を見てもらっていたり、図書館の時間などで特別支援学級の子が交流級に帰っていたりする時間に行う
介入する内容は多岐に渡る。
しかし、基本は「スキルベース介入」である。
学習を補足的に教えるというものではなく、その子の「特性や困り感」を根本的に改善する「スキル」や「機能」など、「ベース(根本)」となるものへの介入支援が基本となる。
 下の写真は、ある子の1時間の流れである。

 「学習」らしいものは、「6〜7」の中にしかない。
 もちろんメニューは子供によって違うが、45分間をおよそ7〜10のパーツに区切って「楽しくトレーニングを重ねる」ものを用意していた。
 大切なことは、
「トレーニングが苦しいものでないこと」
である。
 楽しい中でも、特性や苦手な部分にアプローチしていく。そんな内容が良い。

体幹の筋肉発達支援とバランスのトレーニングで筆記改善を狙った事例
こちらはビジョントレーニングで眼球運動の跳躍と左右への眼球移動のトレーニング。
3ヶ月後には、かなりのスピードになっていることを保護者と確認した。

 さて、このスキルベース介入支援で大切なことは、
「記録資料をしっかりと揃える」
ということである。また、
「できれば、数値や数字、時間などで計測可能」
な記録を取る必要があるということである。
 そのことで保護者の方に、支援の説明と果たすと同時に、この介入で伸びが乏しかった場合の、特別支援学級への転籍等に根拠となる資料にもなるからである。


●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。


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