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多動な息子から学んだこと

小3多動な息子のエピソードと、そこから学んだ子供たちの心を守る大切な心がけ。

愛知県公立小学校教諭 堂前直人



多動のお子さんというと、どんな場面を思い浮かべるでしょうか。

小学校3年生になる我が子も多動です。実際にあったエピソードと、そこから分かったことを2つ紹介します。

まず、忘れもしないのが、小学校の入学式です。拍手に包まれた入場後、自分の椅子に腰掛けるわけですが、彼は椅子の上に膝立ちになり、後ろを向いて私たちの姿をキョロキョロと探しました。そして、私たちを見付けると、手を振り、満足した顔で着席をしました。

親としては、気が気でない姿ですが、ここに、多動の子へ対応する上での大切なことがあるように思います。

それは、「本人の納得感・満足感」です。
 
多動のお子さんたちは、「気になる!」「こうしたい!」という思いで、動き出しています。もちろん、そこで我慢をしてほしいのが大人の願いです。けれども、それが難しいのです。

例えば、教室に入ってきた蝶々が気になって、離席してしまいます。例えば、「これ面白い!」と言った友達のもとに駆け寄ってしまいます。
衝動的! 落ち着かない! と捉えがちな場面です。つい、「勝手に立っては、ダメでしょう!」と叱りたくなります。しかし、叱られたその後も、そのことが気になっていますから、ソワソワして他の事に手がつかなくなってしまいます。対応としては、NGといえるでしょう。
 
一方で、「蝶々が入ってきちゃったね。窓を開けておこうね」とか、「お友達の発見、気になるよね。時間を取りますから、自由に交流してごらん」とか、まずはその子の‟気になり感”を受け入れてあげます。その上で、適切に処理してあげることで、その後、落ち着いて次の活動に向かうことができます。
 
例えてみるなら、「子供たちの心の中の引き出しを開けっぱなしにするか、きちんとしまってあげるかの違い」といえるのかなと思います。開けっぱなしの引き出しがいくつもあれば、集中できませんよね。
 
まずは、受け入れて、納得させる。満足させる。

そうすることで、気持ちが落ち着き、行動も落ち着くわけです。

2つめのエピソードは、友人の結婚式に家族で参加したときのことです。受付に大きな椅子があり、我が子は嬉しそうに、雨で濡れた靴を椅子の上に乗せ、座りました。

「足を下ろしなさい!」と叱ろうとしたその時、同席していた別の先生が、「かっこいいなあ!」とその姿を褒めたのです。そして、畳みかけるように、「王様みたいだなあ」とまた褒めるのです。そして、息子が足を下ろしたその瞬間に、「姿勢がいい! もっとかっこよくなった!」とこれまでで一番力強く褒めるのです。

その先生は、息子を一度も叱ってはいません。否定もしていません。それなのに、間違った行動を正しい行動に変えてしまったのです。
息子はその先生のことが一瞬で大好きになりました。

多動な子たちは、つい衝動的に動いてしまったり、しゃべってしまったりします。そのことを「良くない、やめよう」と思っていても、難しいのです。中には、そのことで、俺はダメなんだ……と自尊感情を低下させている子もいます。
 
だからこそ、彼らに関わる大人は、

よくない行動を叱るのではなく、よい行動を教える。
よくない行動を叱るのではなく、よい行動を褒める。
よくない行動を叱るのではなく、子供の中にあるよい行動を引っ張り出して褒める。

ことが大切になってくるのではないかと思うのです。


© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan

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