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こだわりへのイメージを変えて、指導に活用する

まずは大人のこだわりを外し、子供のこだわりを指導に活用しよう。

長野県公立小学校教諭 原良平



身長順に整列しているのに「一番前じゃないとイヤだ!」と怒り出す。
自分の興味のある話を、相手に構わず話し続ける。
このようなお子さんはしばしば「こだわりが強い」と評されます。
強すぎるこだわりは、「年齢にそぐわないかたよった興味」「自分の興味や予定を優先してしまう言動」「感覚が心地よいために繰り返してしまう行動」として表れ、行動や人付き合いの柔軟性を妨げることがあります。特にASD(自閉スペクトラム症)のお子さんによく見られる特性です。
そんなこだわりに大人が巻き込まれず、指導に活用する工夫を紹介します。

1 こだわりで困っているのは本人でなく「大人」

まず「大人のこだわり」を少し緩めてみることをお勧めします。
大人のこだわりとは「今すぐ」「完璧に」「みんなと同じように」してほしいという、無意識の固執です。
冒頭の「身長順なのに一番前でないと嫌がる」こだわり。これは「整列は『普通』身長順だ」という、無意識の固執から生み出されているとも言えます。このこだわりを緩めてみましょう。
その子が出席番号7番ならば、「今日は7番から整列」とするのはどうでしょうか。自然とその子を先頭にすることができます。
あるいは「先生のことが好きな順」として「〇〇君は先生のことが一番好きなんだね! 嬉しい!」とユーモアで緩ませる対応も面白いですよ。本当に好きならば喜んで「うん!」と言うでしょうし、恥ずかしがって「やっぱり後ろに並ぶ!」と言うかもしれません。
このように大人のこだわりを外して対応すると、こだわりの何割かは「こだわり」ではなくなります。

2 こだわりを活用する


こだわりの強いお子さんの保護者から、「子どもが『先生は話しやすい』と言って、家でグチることが減りました」と声をかけられました。Aさん(仮名)は前年度まで、家に帰るとお母さんに向かってイヤだったことを延々と話して聞かせたとのこと。それが激減したというのです。
この子は新学期の初日、会うなり私に「先生、三八式歩兵銃って知ってますか?」と聞いてきました。
軍事にこだわりのある子だったのです。
「先生は興味ないから知らない」とシャットアウトしてはもったいないので、こだわりを「関係性の構築」に活用しました。
まず「分からなくても興味をもって聞く」ことをしました。とにかくAさんに話してもらうのです。
また「スマホですぐ調べる」こともしました。「先生が興味をもってくれた」と共感性を感じたようです。こんなやり取りを数回した後のある日。Aさんが「実は……」と悩みを相談してくれるようになりました。
こだわりが強いお子さんは、同時に対人関係の不器用さをもつ場合があります。しかし、本人と他者の間に共通点があると、対人関係を構築しやすくなります。この共通点を「本人のこだわり」にすると、コミュニケーションがいっそう取りやすくなるのです。
こだわりを「指導に活用できる」という視点で見てみると、工夫した接し方が生まれてきます。


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