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母親との関係が悪くなってしまった不登校の子と保護者への支援

母子家庭で支援していた母親との連携のポイントは、「子供が来たい」と思う場所づくり。

埼玉県公立小学校教諭 新井亮



私が通級指導の担当をしていた時に「不登校」だった5年生M君。M君は2人兄弟の長男。ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けていました。妹は右手に障害を抱えていました。母親は1人で2人を育てていました。家族は妹の障害には手をかけていましたが、目に見えにくいM君の障害には気付いていませんでした。学校で適応できなくなり、その時に診断されました。通級に来た時には二次障害になっていました。

M君は通級の教室にだけ来られるということなので、通級をステップアップ教室として使うことになりました。母親と面談しました。大きな問題はM君が母親に反抗するようになっていることでした。だから母親の教育力を使おうとしても難しい状態でした。

方針を決めました。(1)まずは通級に来られることを目標にすること(2)M君が通級指導教室に来た時に「楽しかった」と思ってもらえるように、彼が喜ぶ時間をつくること です。

M君は携帯を使った動画編集アプリを使って編集をすることが好きでした。M君と一緒に動画を撮って、一緒に編集をしました。学校に来るかどうか分からない時に、家に電話をしてもつながりません。母親が仕事に行ってしまうからです。そのため、携帯電話をM君に持たせてもらって、私とM君とで、直接LINEで連絡ができるようにしてもらいました。

M君が通級に来られた時には、写真をM君の母親に送ることにしました。いい表情をしているM君を見て、いつもとても喜んでいました。通級に来れた日などを、毎回M君の母親と共有して「今週はここまで来れたので目標達成しましたね!」と一緒に喜びました。M君の母親は妹の通院などでとても忙しく、M君に構っていられる時間がありませんでした。M君の母親に何かをお願いすることはせず、自分ができることを最大限に続けることにしました。そうしているうちに、M君は段々と、通級に来られるようになりました。

その後、M君は改めて医療にかかることになりました。一緒に病院についていきお医者さんの話を聴きました。その上で、一緒に方針を確認しました。帰り際、M君の母親に「必ず良くなります。一緒に頑張りましょうね」と伝えました。M君の母親は「ありがとうございます」と私に言いました。

6年生になって、かなりの頻度で通級に来られるようになりました。学習も少しずつ行えるようになり、他の子との活動も一緒に行えるようになりました。卒業式には出られませんでしたが、通級教室で校長先生から卒業証書を受け取りました。

M君の母親から「卒業式までこうやって一緒に学校に来られてうれしいです。本当にありがとうございます」とお礼を言ってもらいました。その後、M君は自分でフリースクールを見付けて、自分の力で登校しています。


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