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★有料(メンバー無料)★<荒れた中学校を立て直した! 人生を変える指導法>自尊心を傷つけずに行動変容を促す術① ※①のみ全員無料

行動変容を目標とすれば、「怒鳴る」や「皮肉を言う」は目標から全速力で遠ざかる行為である。自尊心を傷つけずに相手をその気にさせる方法を採ろう。

埼玉県公立中学校 長谷川 博之


長谷川博之先生セミナーIN群馬 対応により、子どもは変わる 
特別支援の対応から学ぶ 長谷川博之の対応技術

2015年11月、群馬県高崎市で開催。「長谷川先生の新しい赴任先での実践を知りたい」という多くの声に応え、赴任校での授業指導をはじめ合唱コンクール、部活動、生徒指導といった様々な場面での対応技術を自身の体験を踏まえて紹介。本稿ではセミナーの一部をテープおこしで再現する。


1.1人も歌わない「合唱」

 最初に前任校の最後の年、飛び込みで三年生を担任した時の合唱を見せます。これは、テレビ局が1年間私の学級に入り、日常から体育祭、文化祭まで撮ってくれた映像です。画質が違いますね。

次に、40人学級で、私が26歳くらいの時につくった合唱の映像です。3年間持ち上げたからこのような「全員本気」の合唱になったのです。

この時は5学級あったのですが、三年に上がる時には一、二年生の時に歌ってこなかった子たちが私のクラスに入ってきます。私が育てた子たちは他の学級に入って、全体をリードするようになります。それで、前の年に歌わなかった子たちが私の学級に入ってくるわけです。そういう生徒たちにも歌わせることができなくでは駄目ですね。苦労はありますが。

他の学級は元長谷川学級の生徒たちが引っ張って良い合唱をつくるから、三年の合唱の質はすごく均衡するのです。

合唱部がないから、とにかく担任が指導するしかない。学年全体を伸ばすことが何より大事だから、自分のクラスだけダントツで良くても全く意味がない、というわけです。私の思想が子供たちにも共有されている。

さて、今年です。前の講座で赴任先の二年生の様子を見せましたが、あの子たちが合唱コンクールでどうなったかです。今みたいな合唱になったか。
なりません。出逢って6ヶ月ですよ。夏休みを抜いて5ヶ月です。ならないです。

合唱コンクール3週間前の練習の時の映像を見てみましょう(合唱の映像。女子は歌っているが、男子は誰一人口を開けず、隣と話したり、ふらふらしたり、窓の外を眺めたりしている)。

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〈解説 長谷川〉
 中学校教育の成功の秘訣は「学年づくり」である。
 ある学級だけがずば抜けて良いという状態を打破する必要がある。
 ただし、一時的にはそうなり得る。
 皆一斉に集団形成の段階を踏むことはあり得ないからである。
 先頭を走る学級が他を牽引すると同時に、支援をする。
 そのように組み立てることが重要である。
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こんな感じですね。これが3週間後にどうなるかです。前任校でもその前の学校でも、先ほど見せたような質の合唱をつくりあげましたが、今年はどうなるか、と。

たぶん、来年はあのようになります。しかし、今年はまだまだです。

これは合唱コンクールの本番です。(映像)

男子の声が聞こえるの分かりますか? 分かりました、今? 

全員が指揮者を見ているのが分かりましたか。私はそれをめちゃくちゃ褒めたのです。

うちのクラスは保護者が全員来てくれて、全員泣いていました。全員泣いているのですが、半分は怒って泣いているんですよ。

始まった瞬間に女子が次々に泣き出したんです。次々、次々。泣いているから声が出ない。その泣く姿を見て、保護者は男子がふがいなくて、情けなくて泣いたんだと勘違いしたのです。それで、女子の親は怒るし、毎日ピアノに通わせた伴奏者の親も怒るし、相当怒っている人がたくさんいました。
 
「長谷川先生があそこまで4月からやってくれているのに何なんだ、男子は ! 先生、ひっぱたいていいですか!!」というわけです。

そこで私は話しました。
お母さん、気持ちは分かるよ。だって、うちの学年だけですから。中三と中一はそこそこの合唱をやっていて、中二だけがやっていない。お母さん、恥ずかしいんだよね。

多くの保護者も、教師集団も、この状況では褒められないのです。

でも、私は女子に聞いたのです。「何で泣いたの?」と。すると、女子はこう言った。「男子の声が聞こえたからです」と。舞台の上では男子が歌っている声が聞こえていたのです。「男子の声が聞こえました」「全員が指揮者を見てました」「伴奏者まで男子の声が聞こえました」と。口々に言うわけです。

そう言えば、合唱が終わった瞬間の男子の表情はとても良かったのですよ。今で言う「どや顔」(得意顔)で帰ってきましたよ。あんなふうな合唱だったのに、席に着く時に私を見て「先生、やったぜ !」というような顔をしているのです。

つまり、彼らは全員1人残らず成功体験を積んだのです。

日記にも「やり切りました」と書いてくるのだから。
しかし、客席の奥までは届かなかった。だから保護者は怒った。

(②に続く)


長谷川博之
NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。TOSS埼玉志士舞代表。日本小児科連絡協議会「発達障害への対応委員会」委員。全国各地で開催されるセミナーや学会、学校や保育園の研修に招かれ、講演や授業を行っている。また自身のNPOでも年間20回ほどの学習会を主催している。


※この記事は2016年6月1日発行の『TOSS特別支援教育 第3号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。https://www.tiotoss.jp/

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