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教室に入れない子の心の扉を開けた「算数難問」

教室には入れず、1日のほとんどを図書室で過ごしていた子がいました。その子を変えたのが「算数難問」という教材です。

静岡県公立小学校教諭 橋本諒



職員室に向かって歩いていると後ろから子供の声が聞こえました。
「先生! この問題面白い! もっと出して!」
隣のクラスのA君の声でした。
本を読むのが好きで、1日のほとんどを図書室で読書をして過ごしていました。
普段は私から声をかけても反応がありません。なかなか関わることすらできていませんでした。

そんな、A君がハマったのは『算数難問1問選択システム』でした。

『算数難問一問選択システム』木村重夫ほか編 学芸みらい社

私の学級では授業の時間に、時々行っていました。
休み時間になっても子供たちが問題を解き続けるほど熱中する教材でした。
クラスでも熱中していましたが、他のクラスも巻き込もうと廊下に次のような掲示をしました。

様々なクラスの子が挑戦してきました。
他学年からも挑戦者がいました。

難問にハマる子を見ていると、ある共通点がありました。
①勉強が得意な子…得意な子が難しい問題に果敢に挑戦をしてきます。
②教室で大変な子…勉強はできるのだけれど、どこか手が掛かる子。今思えば発達障害だったのかもしれないです。難問には、そういった子を惹きつける不思議な魅力がありました。

この廊下の掲示に挑戦したのが図書室で過ごしていたA君です。
「先生この問題の答え5だと思うけど、どうかなー」
目線は合わず、不安そうな顔で答えを言ってきました。
「おー! 正解! すごいなー! 正解したのはA君が初めてだ!」
とっても大袈裟に褒めました。すると、A君は少しニコッとなりました。

そして、他の問題にも挑戦をしました。
「これは9だと思うけど」
「あーおしい! いい線いってるけど」
「え! 考えてくる」と図書室に戻っていきました。

A君は、次の休み時間には、廊下の前にひっそりと立っていました。
「どうしたの?」と聞くと、
「できた。10?」と、不安そうに聞いてきました。授業の時間に考えていたみたいです。
「おー!! よくできた! すごい!!」
「よっしゃ!」と小さな喜びの声が聞こえました。

廊下の問題を全て解き終えたA君には、
難問のページを1枚印刷して渡しました。
これも次の時間には解き終えて持ってきました。
こうしてA君との交流が始まりました。

そして、数日後A君からある紙を渡されました。

A君が作った問題でした。
私が声をかけても反応がなかったA君が、自分から問題を作って渡してくれました。

教師1年目の、知恵も力もなかった私が、A君と心を交わすことができました。
A君と私をつなげてくれた教材が『算数難問1問選択システム』です。
今でも毎年教室において、重宝しています。


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