奇妙な行動でも叱らずに、一度受け止める
行動を本人にも体感させ、「アウト/セーフ」ラインを決める。最後に代わりの行動を一緒に考える。
北海道公立小学校教諭 赤塚邦彦
以前担任した太郎くん(仮名)。
太郎くんには、身近な大人の女性の手のひらを見るという行動がありました。
他の学級担任の女性の先生や学習支援員さん、介助員さんなど、対象は様々でした。
その方たちを見ると、そっと近寄り、さっと腕を取り、手のひらを見るのです。
「やめなさい!」と叱っても効果はないばかりか、パニックになったり、反発したりするだろうと思いました。そこで、次のように対応しました。
①まずは「こだわり」を受け止める
一見すると奇妙な行動に見えます。しかし、太郎くんはこの行動をすることで心を安定させています。
「手のひら、気になるよね〜」
と言い、受け止めました。
②周囲にどう思われているか教える
太郎くんの行動は、周りの子供たちには、直接の迷惑にはなっていません。
しかし、急に腕を取られ、手のひらを見られる方にとっては、かなりびっくりする行為です。太郎くんはそのことに全く気付いていません。
そこで、私が太郎くんの真似をしてみることにしました。
私は、いきなり太郎くんの腕を取り、手のひらを見たのです。
びっくりする太郎くんに感想を聞きました。
「太郎くん、いきなり手を取られて、手のひらを見られたらどう思った?」
「いきなり手を取られてびっくりしたよ!」
「そうだよね。太郎くんがいきなり手を取ることを嫌だという人がいます」
自然な形で、太郎くんは受け入れてくれました。
③こだわり行動の「アウト/セーフ」を決める
太郎くんのこだわり行動の中で、どこまで許容範囲かを考えます。
いきなり人の腕を取るのは駄目でしょう。特に男の子がいきなり女性に触ることは、将来的に問題になることが予想されます。
手のひらを見るのは良いでしょう。中には見られたくないという人もいると思いますが、太郎くんのケースではここをセーフにしました。
手のひらを見るのはセーフ
腕を取るのはアウト
太郎くんには、次のように言いました。
「手のひらを見るのはいいと思います。でも、太郎くんも分かったと思うけど、いきなり腕を取られたらびっくりするから、いきなり人の腕を触わることはやめようね」
太郎くんはウンウンと納得していました。
④代わりの行動を考える
最後に、太郎くんが満足できる「手のひらの見方」を考えました。
太郎くんと一緒に考えましたが、太郎くんから考えが出なかったので、私の方からいくつか提案しました。
A 手のひらの写真を取らせてもらい、それを見る
B 「手のひらを見せてください」とお願いし、腕に触らないで見る
太郎くんはBを選択しました。
その後、いきなり女性の腕を取りにいくという行動は少しずつ減っていきました。
[ポイント]
1 「こだわり」を叱らずに、一度受け止めたこと。
2 自分の行動を体感させたこと。
3 「こだわり」行動から生まれる迷惑行動のみを納得させた上で排除したこと。
4 代わりの行動を教えたこと。
特に1が難しいです。奇妙な行動を受け入れる度量をもっと身に付けたいと思っています。
© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan
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