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小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第18回 【特別支援教育の基本は「ポジティブサイクル」を回すこと VOL.3】

2023年4月より「ささエる」編集長・小嶋悠紀の週1連載が始まりました!
メンバーシップにご登録された方は毎週金曜日に、それ以外の方は月1回第1金曜日の分だけお読みいただけます!
今回は第1金曜日ですので、どなたでもお読みいただけます!

 前回まで、「発問する・指示する」の詳細を述べてきた。
 ここまでくれば、「実行する」は子供たちにとってたやすいように思えるだろう。

 しかし、実はこの「実行する」にも、やはり、大人の支援や工夫が必要になる。
 ポイントは3つ、「システム・ルーティン・構造化」である。
「システム」は、授業の中における「ユニバーサルデザイン」として、発達障害の子供たちだけでなく、多くの子供たちにとって「優しい授業」につながることになる。
 システムの代表格は、「あかねこスキル」(光村教育図書)の学習システムである。
 向山氏は教材開発の観点として次のことを繰り返し伝えてきた。
「教師が何も説明していなくても、パッと一目で見て、何をするかを子供が理解して取り組めること」
「質問が子供から1回も出ないこと」
である。
 この観点は特別支援教育における「システム」にとって、とても重要になる。
システムとは、「学習の取り組みやすさ」であり「何をすれば良いかがハッキリと分かる環境設定」と「思わずやってしまうプロンプト(行動を促す刺激)」が備わっていることであると言い換えることもできる。
 例えば下の写真である。

 これは私がコンサルに入っている児童発達支援施設でのシステム例の1つである。運動サーキットであるが、最初は黄色の矢印はなかった。
 子供たちは、赤のハードルを飛び終わると、次にどこにいけば良いか混乱していた。そこで黄色の矢印の丸を写真のように置いた。これがプロンプトとなり、子供たちは止まることなく運動を続けることができた。
 システム自体がプロンプトとなっているかということを考えさせられる事例でもあった。
 次の写真は、私が特別支援学級で採用していた学習システムである「5段トレーシステム」である。

 一つ一つのトレーに学習課題が入っている。
 これならば、45分間の学習で5つの課題であることが、何も説明しなくても理解ができる。子供たちはトレーの上の段から学習に取り組んでいく。
 その学習が終わると、次の段のトレーに移行する。
 最後の段までが終わると、45分間の学習は終了である。
 このようにシステムがハッキリとしていることと、前号までの「指示や発問」が合わさることで、子供の学習のしやすさは段違いに向上することがお分かりいただけると思う。


●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。


※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/

© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan

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