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<暴言を吐く子…どう対応する?>暴言を一旦受け入れて、ユーモアで返す

暴言を吐かれると教師もカッとなるが、一旦受け入れることで、お互いに落ち着く。

千葉県公立小学校 小松和重

子供は、いきなり暴言を吐くわけではない。必ず理由がある。

以前の勤務校で、小学三年生男子が、特別支援学級担任に暴言を吐いた。原因は、自分の勉強が終わったのでアイロンビーズを使おうとしたら、まだ授業中なのでストップされたこと。
私もその場にいたので、「そんなことでキレて、暴言を吐くのか」とびっくりした。

男子は最初は、「何で? やらせてよ!」と泣きながらお願いしていた。しかし、何度言っても担任の返事は「ダメ。休み時間になってから」だったので、男子は「くそばばあ」「死ね、死ね、死ね」などと叫びながら、教室にあった新聞紙をびりびりに破き、教室中にまき散らした。

私は、違う子供を指導していたこともあったが、新聞紙なので危険な行動ではないと思い、あえて無視した。特別支援対応には鉄則がある。

増やしたい行動→ほめる
できたら減らしたい行動→無視する
絶対にやめさせたい行動→断固として止める

この場合は、「できたら減らしたい行動」だと判断したからである。

結局、男子はしばらく教室を散らかした後、チャイムが鳴って休み時間になったので、アイロンビーズを始めた。その時は特別支援学級担任も叱らなかった。片付けは、落ち着いてから「少しだけ」やらせた。

私が直接暴言を吐かれたわけではなかったが、「ダメ」の一点張りでなく、「やりたいよね。でもあと5分我慢ね」というようにもっと適切に対応できたはず、という気持ちが残った。
まずは、一旦暴言を受け入れるような対応をして、暴言が止まったらほめる。その後に、暴言ではなく、どうすればよかったのか指導したい。できれば、ユーモアで対応できれば望ましい。



・小学三年生男子 診断なし 学力は高い。
・思い通りにいかないと、キレる。
・女性の先生には暴言を吐くことがある。
・暴力は振るわないが、物に当たる。
・落ち着いたら、今までのことを忘れてすぐに元に戻れる。
・後で振り返っても、素直に気持ちは話すことができない。
・友達とも、暴言が原因でトラブルになることがある。


NG対応 暴言にまともに反応してしまう

暴言に対して、「何言ってるんだ‼」とまともに反応してしまう。教師も頭に血が上っている状態なので、余計子供を興奮させてしまう。そうすると、ますます「うるせえ!死ね!」などと暴言がエスカレートし、教師は「うるさい!黙れ!」と怒鳴ることになってしまう。
怒鳴って言うことを聞かせようと思っても、子供は言うことを聞かない。下手をすれば、体罰になりかねない。

効果のあった対応1 一旦暴言を受け入れる

「そうかー、言いたくなるよなあ」「よっぽど腹が立ったんだよなあ」と一旦受け入れる。
「腹が立っていると、『うるせえ!』とか言っちゃうよなあ」と共感することが大切である。
そうすることで、教師も落ち着くことができる。

効果のあった対応2 ユーモアで返す

「くそばああ」⇒「くそばばあね、くそじじいじゃなくてよかった」(女性の場合)
「死ね!」⇒「先生は不死身だからなあ。長生きするよ」などと、ちょっとしたユーモアで返す。おそらく、このあたりで暴言は止まる。

効果のあった対応3 暴言を止めたことをほめ、その後に指導する

暴言を止めたら、「よく止めることができたね」「我慢できたね」とほめ、「でも、人にそういうことを言うのはよくないよ」と指導する。「腹が立ったら深呼吸しよう」「先生に『キレそうです』と言おう」など、どうすればよかったかを教える。


※この記事は2016年6月1日発行の『TOSS特別支援教育 第3号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。https://www.tiotoss.jp/