小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第5回 【人的環境調整を実現する「特別支援教育 クエスチョン8」で校内研修を実現するVOL.1】
2023年4月より「ささエる」編集長・小嶋悠紀の週1連載が始まりました!
メンバーシップにご登録された方は毎週金曜日に、それ以外の方は月1回第1金曜日の分だけお読みいただけます!
(今回はゴールデンウィーク中にお読みいただけるよう、特別に5月2日火曜日の公開となります)
前回(4月28日公開分)にて「特別支援教育 8つの質問」を公開した。
この8つを校内で研修するだけで、先生方の特別支援教育に関する「人的環境調整」はかなり向上するはずである。
Qustion1 「ADHD」を日本語訳してください。
これは多くの場合「注意欠陥・多動性障害」と出てくると思われる。
しかし、診断基準である「DSM-5」になって名称が変わった。
Answer1 「注意欠如・多動症」
である。
なぜ、この名称を「日本語訳」できることが重要なのだろうか?
それは、この名称に「ADHDのある子供たちの特徴」が凝縮されているからに他ならない。
まずは、「注意欠如」である。
ADHD傾向があると「注意集中が難しい」という特性をもってしまう。
「注意集中が難しい」には3種類ある。
1)注意が次々に切り替わる
1つのことや物に、ある程度の時間注意を向けるのが難しい状態である。
そのため、「落ち着きなく次々に興味が移り変わる」ように見える。
2)注意をある程度持続することが難しい
何か課題を行うときには、ある程度の時間、注意を持続することが重要になる。
しかし、ワーキングメモリの関係で定型発達の子供に比べると、その時間を短くしないと脳がオーバーフロー(情報があふれて処理しきれなくなる)を起こしてしまう。
3)過集中してしまう
これは逆に一つの物や事に「注意しすぎてしまう」状態である。ASD(自閉スペクトラム症)系のこだわりと違い、ワーキングメモリのフォーカス機能を興味をもった一つの事象に全力で使う。このため、今やるべき他のことになかなか注意を向けられなくなってしまう。
「注意欠如」だけでも、これだけの困難性を抱えている。詳しくはさらに5月の2週の連載で述べる事になる。
次に「多動」である。
もちろんこの「多動」は言葉通りの「動きすぎること」を指し示している。
「同じ年齢の子供たちよりも体の動きが過剰」「常にどこかが動いてしまう」「走り回る・離席するなどの行為が目立つ」というようなことだ。
さらに、この「注意欠如・多動」という順番にも意味がある。
多くの子供の場合、「多動」は年齢が上がっていくにつれて、治まってくることが多い。
「3年生まで離室していたけど、4年生になったらしっかりと教室の席に座っている」
というエピソードを体験した教師は本当に多い。
つまり、多動部分は、脳の成長と共に緩やかになる。
しかし、「注意欠如」の部分は、大きくなっても付き合っていかねばならない。
そのようなメッセージも込められての順番なのだと理解することが大切だ。
●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。
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© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan