編集長対談 小嶋が行く! 第3弾:田上善浩氏 【第5回 傷つき体験のある子も自然に受け入れられる】<有料マガジン・メンバー無料>※今回は無料公開
「ささエる」の小嶋悠紀編集長が、様々な人たちと特別支援に関する対談をするコーナーの第3弾です。
今回の対談相手はオルタナティブスクールのWING SCHOOLを立ち上げた田上善浩氏です。
この対談のテーマは「子供たちが『傷つき体験』をしない教育とは」です。
第5回は「傷つき体験のある子も自然に受け入れられる」です。
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※記事の最後に続きの対談風景の動画を収録しています。
小嶋 傷つき体験のある子、特に特別支援を要する子たちを僕はよく見てきたんですけれど、やっぱり、もう小さい時から、たくさんの傷つき体験があって、だからこそ感性が開かないんですよね。WING SCHOOLのいちばん下の土台の部分。そういうような子たちは多かったですよね。
田上 多かったですよ。過去のトラウマがあるから、くじ引きで何かを決めようとした瞬間に「俺は、くじ引きは嫌なんだ!」と言う子がいました。こちらは「どうした、どうした、どうした」ってなって。
小嶋 よっぽど何かあったんですね(笑)。
田上 「過去の傷つき体験がフラッシュバックして」みたいな子が、どこそこにいました。本当にいろいろなものを背負ってきていたので。前の学校の空気感では、ぜんぜん対応できていなかった。「何をやっているんだ!」みたいなことになって、抑えつけられてきちゃって。だから、小学生を中一に迎えた、「中一逆ギャップ」(「3,めっちゃ楽しい学校を目指して」を参照)の時みたいに、「中学って、めっちゃ楽しい」みたいな感じで、「ここのスクール、めっちゃ面白い」とか、「ここでは自分らしくいられる」とか、「これも受け入れてもらえる」とか、まず、そこから入らないと。だから、いきなり注意とか、「ちゃんと座っておこうよ」とか、「それ、迷惑だぞ」とか、そういうものではない空気感のスクール。
小嶋 途中で転入してくる子もいるじゃないですか。やっぱり途中で転入してきた子は、傷つき体験をもとにした反応が出ますよね。
田上 ああ、出ますね。
小嶋 でも、すごく温かくて、「受け入れるよ」みたいな、今までの先生たちと違う対応になるじゃないですか。そこに対する反発はあったんですか。
田上 うちのスタッフも、子供たちもスルーが上手いんですよ。
小嶋 なるほど、そうですね。
田上 反応しないというか。それで、その子が「うわー」ってなっても、「ああ、また起きてるね」となる。周りの子供たちも、そういう反応をした子を今までにも見てきて、それが変化した様子も見ているし、何なら「自分もそうだった」みたいな経験がある。だから、そこをいちいち責めもしないし、いい意味でスルーしてくれる。その子がいい感じになったときに、すぐちゃんと受け入れる。その辺のモードが、やっぱりぜんぜん違う。
田上 特に、縦割りのクラスということがあって、3学年が一つのクラスになっているんです。だから、上の子たちが2年目、3年目になっていて、そういうのにすごく寛容になっていたりするんです。同じ学年だけだと、比較が生まれたり、「なんかあの子、ペースが違うな」となったりしちゃうけれど、もともとペースが違う3学年がいるから、ごちゃ混ぜになって寛容に日々過しているんですよ。それで、新しく入ってきた傷つき体験のある子の反応に対して、すごくいい意味で寛容でスルーできるというような例が、多くあります。
小嶋 なるほど。傷つき体験のあった子が途中で入ってきたときも、また年度が新しくなって、人数が増えて環境が変わったとしても、そのベースとなる土台があるから、その傷つき体験のある子も受け入れやすい。それが、選択肢としてのこの学校の雰囲気になっているのかなと思いますね。
田上 そうですね、そう思いますね。学力不振とか、イジメとか、先生と合わないとか、いろいろな現象が起きるけれど、結局、その空気感。そこの空気感を、子供たちは肌で感じる。「オルタナティブスクール」では、そこの空気感がやっぱり違う。WING SCHOOLも空気感が違う。公立学校時代の私のクラスも、やっぱり違っていたんですよね。
(「6,特別支援を要する子たちはシステムエラーを感じている」に続く
2024.4.11アップ予定)
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田上善浩(通称:善さん)
熊本県(市)公立中学校英語教師として29年間勤務。
英語授業やクラスの「中学の奇跡」と評された学級経営や授業などでの子ども達のパフォーマンスの高さが話題となり、セミナー講師として北海道から沖縄まで約100回セミナーを開催。その間、2000年より自宅にて月1回の授業研究サークルを主催し、先生達や学生達を指導。
2018年4月に一般社団法人WING SCHOOL(小1〜中3の90名)を代表理事・校長として開校。(http://wingschool.jp/)
「感性」「知性」「創性」の三層で「幸せな未来を築く力」をつけるための教育を展開。現在、小学校から大学までの設立を目指し、教育界から一人一人が自分らしく輝く新たな時代を築き上げようと活動中。
小嶋悠紀
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。
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