見出し画像

<第3号ミニ特集>若手教師の特別支援教育実践①

特別支援教育に携わる若手教師たちが合宿を行い、それぞれの実践を報告し合いました。若手たちのフレッシュな実践の数々をご紹介いたします!

(構成:「ささエる」編集部)



1、自分はこのクラスに馴染めないと言っている不登校高校生Aへの対応

1 本人のことを知る努力をする
本人に直接聞くこともそうだが、保護者の方にも「普段どんな子なんですか?」と聞いてみる。そのことで、保護者と子供の話題で話せるようになった。また、彼が好きな食べ物は何か、ゲームは何かなど聞いたうえで、自分も実際にやってみるということを意識した。
2 学校に来いと言わない
学校に来たいと本人が言うまでは学校に来いとは言わない。学校に来いと先生が言うと強制力が働いてしまう。それまで本人のことを知る努力をする必要がある。
3 オンラインにつなげる
電話越しでGoogle Classroomの登録を行った。限定公開コメントでやりとりを行い、オンライン授業に参加したいと本人から申し出があり、オンラインで授業に参加した。その後、生徒とつなげるため放課後タイムをつくる。

(日戸勇希)

2、学校中をふらついてしまっていたA児への対応

1 特別支援学級を安心できる空間にする
A児は、フラフラしてしまうことを、支援級の先生によく叱られていた。そのため、支援級にいる時間がストレスになっていた。
私は隣の支援級の担任だったため、その先生に許可をとり、私の学級で過ごしてもよいことにした。
2 A児が得意なことを一緒に行った
A児は、工作が得意だった。そのため、アイロンビーズや割りばし鉄砲を大人顔負けのクオリティでつくることができた。
A児はフラフラしてしまっていた時間を、私の学級で過ごせるようになった。
3 信じて送り出す
A児は、交流学級の授業に出たがることがあったが、その時にまたふらついてしまうのではないかと頭にちらつく。
しかし、A児に「がんばってきてね」と送り出した。そのように送り出した時にA児が交流学級の授業から飛び出してしまうことは、卒業するまで一度もなかった。
A児が一番、自分の行動がよくなかったことを理解していたのだと思う。

A児は、卒業式の日に私に手紙をくれた。信頼できる大人に教師がなることの大切さを学んだ。

(金井貴大)

3、こだわりの強い子供が謝れるようになる対応

「こだわりが強い」と引継ぎのあったA児。その日は友達と掃除中に「雑巾がけをしないのなんで?」と問い詰められて小さなパニックが起きてしまった。話を聞くと「ぼくには友達は一人もいない」「みんなぼくのことをきらいなんだ」と言う。どうやら、4年生のときに友達にたたかれたことを引きずっているようであった。1年間かけて以下のような対応をした。
①その場で怒鳴られないこと、クールダウンの時間をとってもらえることを体感させた。
②相手が謝ってくれることで素直になれるようだった。周りへの声掛けと共感、けんか両成敗を徹底した。
③「~しちゃったかもしれない」と認められるようになった。大いに褒めた。次第に「~しました」と言えるようになった。
④聞いてほしくて大きな声を出してしまうときには「ポジティブに無視しよう」と普段から周りの子に声掛けした。
⑤1つ1つのトラブルを周りの子が引きずらないように気を配った。
結果、今でもいじわるな行動をしてしまうことがあるが、周りの子からの目が変わった。「Aってかわいいよね」という声が聞かれるようになった。トラブルが起きてもその場で謝れるようになった。

(丹羽美雪)

4、ネグレクトを受けている子供への、学校が居場所となる環境づくり

4月6日始業式、特別支援員がいる目の前でA児は脱走した。次の日も、その次の日も。新しい学級への不安感や自分の思いを伝えることができないことから起こったことである。A児の両親は離婚している。加えてA児はネグレクトを受けている。そんなA児に対して学校が居場所となるように3つの活動をした。
1 クラスを居場所だと思えるような関係づくり
微笑みながら、近づき、触れながら好きなゲームなどについて会話してA児との関係づくりをした。
2 教材・教具の活用
「ソーシャルスキルかるた」や「フラッシュカード」を活用し、活躍場面をつくった。
3 傾聴しながらの指導
A児の考えをを聞いた上で、行動のいけなかったところを指導し、代案をA児と対話しながら決めていった。
2学期まで続けていくと、だんだん自分の気持ちを伝えることができるようになった結果、脱走することは減った。

(虫明周吾)

5、優先順位を付けることが苦手な子供が、給食当番をできるようになるまで

給食当番のAくん。いつも白衣に着替えるのが遅く、給食の準備でみんなに迷惑をかけている。やることの数が多すぎで、覚えられず、優先順位を付けることが苦手なのである。教えて、褒める。で対応した。
特別支援学級の自立活動で、給食当番で、牛乳とストローを配る手順を整理した。
まず、落ち着いた状況で、やることを一つずつ付箋に書かせた。8工程になった。付箋を入れ替えながら、やる順番を確認した。並べ替えたものをイラストで描かせた。それを「ぱっと行動カード」のようにリングにまとめて、給食準備の時間に担任や支援員がもって提示することで、行動内容を分かるようにした。徐々に見せる数が減っていき、やがて自分一人で給食当番が務まるようになった。

(柳町直)

<②へ続く>


© 2024 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/