小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第21回 【「過敏性と教育」① 〜過敏性に鈍感な大人たち〜】
2023年4月より「ささエる」編集長・小嶋悠紀の週1連載が始まりました!
メンバーシップにご登録された方は毎週金曜日に、それ以外の方は月1回第1金曜日の分だけお読みいただけます!
今回は第1金曜日ですので、どなたでもお読みいただけます!
あらためてこの「特別支援教育総合WEBマガジン『ささエる』」に執筆していく中で、どうしても書いておきたい内容があった。
それが
「感覚過敏の問題」
である。
現在、保育園や幼稚園・児童発達支援などのコンサルティングや発達支援アドバイザーを行っている中で、1000名近い乳幼児の子供の発達に関わることができている。
その中の自閉傾向の子供たちに、この「過敏性の問題」を抱えている子供を本当によく見るのである。
実は、この「過敏性」に関する研究は、ごく最近広まってきたものである。
下の写真を見てただきたい。
自閉の子供は、よく耳を塞ぐという行動に出る。これを見た読書の方々は、「音がうるさいのかな?」と予想することができるだろう。
しかし、ベッテルハイムなどの学者たちに代表される研究者の多くは、これを
「心理的な防御反応=外界から自分を遠ざけようとする行動」
と捉え公表していたのである。
つまり、わずか50年前までの自閉症研究では、「感覚過敏」という概念自体が「存在しなかった」ことになる。
レオ・カナーが自閉症を世に知らしめたのが1943年。
そして「感覚過敏」が知られるようになったのはテンプル・グランディン、ドナ・ウィリアムズが自伝出版した1990年代に入ってからである。「感覚過敏」という概念は、わずか30年ほど前からようやく広まり始めたに過ぎない。
その後、自閉症の診断基準として、2013年にDSM-Ⅴに「感覚過敏」が採用された。
つまり、この10年でようやく「感覚過敏」を知る人が多くなってきたのである。
「感覚過敏」の支援、特に「理解面」に関する啓発は、非常に難しい場合がある。
それは
「定型発達してきた大人」には、「体感することができない」
からである。
このため、
「どのように感じているか想像がつかない」
という状態になり、その苦しさに寄り添うことが難しくなる。
また大人や年配の方が子供だった時に比べて、現代の様々な場面は
「音の種類が多くなっている」
この時代の変化も一つの原因であると私は考えている。
これらのことがあるにもかかわらず、「我慢すれば大丈夫」「慣れれば、よくなる」「私の小さい時も同じだった」という根性論を通そうとする人が今もなお教育現場にいるのである。
今回から、この連載では「感覚過敏と教育」について、事例を交えながら迫っていきたいと考えている。
●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。
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© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan