小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第1回 【発達障害児童・生徒8.8%の衝撃は教育界を変えるのか?】
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2022年12月13日の文科省の発表で、通常学級に在籍する小中学生の8.8%に、学習や行動に困難がある発達障害の可能性があることが発表された。
10年前の調査に比べると、「2.3ポイントの増加」である。
これをどう捉えるべきだろうか?
1 発達障害の認知が広がった
確かに10年前に比べると「発達障害」という概念が広がっていることは分かる。
診断を受けている子供もかなり多い。
もはや教職員で「発達障害って何?」という人はいないだろう。
これは特別支援教育が前進した証拠であると言っても良い。
2 困難性のある子供を発見することができるようになった
教室には、やはり何かしらの困難性のある子供たちが多い。
しかし、今までは「甘え」「わがまま」として捉えられていることが多かった。
また教師の「高圧的な指導」や「恐怖」でその状況を押さえ込まれていたという実態もあるだろう。
「発達障害」という認知が広がったことで「困難があるのではないか?」というスクリーニング(※)機能が働くようになったことは間違い無いだろう。
以上は良い面である。だが、もちろん悪い面もあるのだ。
また違った視点でこのことを見てみたい。
3 指導や授業のまずさが「発達障害」のせいにされる
これは正直、そのようなことがあった。
「学習に困難性」があるだけの子供が、高圧的な指導を受けた結果「問題行動」を引き起こし荒れていくということも少なくない。
また、これだけ多様な子供たちがいるのにもかかわらず、授業や指導法が「昭和のまま」という現状も多くみられる。
4 診断→放置になっている
通常学級に在籍していながら診断を受けた発達障害の子供は、特別支援学級でのサポートを受けていない。専門的なトレーニングや個別の合理的配慮を受けることができていない。
一部でも特別支援学級のサポートを受けられればいいが、特別支援学級も常に満員状態でその余裕はない。
発達障害の認知は広がった→困難を持つ子供たちのスクリーニングもできるようになった→ただ、通常学級で発達障害の子供たちのサポートが十分かと言われるとそうでもない
では、私たち大人が彼らにできることは何なのだろうか? (続く)
●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。
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© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan