<荒れた中学校を立て直した! 人生を変える指導法>自己決定権は尊重するが主導権は渡さない①
一筋縄ではいかない生徒の変容を促す超積極的対応。
埼玉県公立中学校教諭 長谷川 博之
教師力パワーアップセミナー 対応により、子どもは変わる
特別支援の知見を活用した長谷川博之の対応技術
2015年7月、大阪府大阪市にて開催。
「対応により、子供は変わる」をテーマに、特別支援教育の知見を活用した対応技術が示された。
どんな状況でもあきらめず、圧倒的な子供の事実を作り出す長谷川氏の講座は圧巻。
本稿ではこのセミナーの一部をテープおこしで再現する。
4月8日、新入生のすごくやんちゃな男子が廊下の向こうから私を見つけて、言ったのが次の一言です。
「あ〜! 超積極的指導〜!」私の本を読んでいる!
「いや、読んでません! グーグルで調べました。ググりました」
そんなわけで、私はその男子から「超積極的指導先生」と呼ばれています。
三年男子が上半身の筋肉を見せびらかすように廊下を歩いています。それを見て、その一年生がこそっと言うのです。
「先生、今こそ超積極的指導ですよね! どうやるんですか? あの先輩にどうやるんですか? 見せてください!」
私は三年生に近寄って行って、「お前、シャツを着ないと脇毛を抜くぞ」と言うわけです。そのまま一年生のところに戻り、「これが超積極的指導だ」と言う。
「なるほど! 先生やりますね!」
毎週こんな感じです。本当に。毎日、他学年とも関わっています。
さて、私の場合、いわゆる「黄金の3日間(※)」の静けさ、素直さを持ち合わせていない生徒集団を担任することが多いのです。その3日間、優先順位をきっちりつけて、なんとか終えます。では4日目にどうなるか。ある年の4日目の話です。
まず、無遅刻無欠席。次に、朝読書の時間中、一言もおしゃべりなしで過ごすことができました。給食の時間、規定通り1時10分に片付けをすることができました。当然、それを守らせるために、山ほどの手立てを採りました。
たとえば、運搬を一緒に行う。配膳も一緒にやる。配膳台の片付けもやる。布巾で一緒に拭くようにしています。
体育の授業等が長引いて1人も戻ってこない時には、私は1人ですべての給食及び食器類を3階に運び、全員分の配膳を始めています。
※新年度が始まって最初の3日間のこと。
こんなことはどうということはないのです。すごいことでもなんでもない。しかし、そうしているから、生徒に私の言葉が入る。私がすべてをやってでも、君たちに時間を守らせたいんだ、時間を守ることはすごく大切なんだ、重大な意味があるのだと教える。
1時10分に片づけないと、配膳員さんはパートで来ているのだから、例えばそのあと幼稚園に迎えに行く人もいるし、親の介護がある人だっている。生徒の片付けが遅れ、結果として仕事が10分でも延長したら困るんだ、子供が独りぼっちになってしまうんだ、だから私たちは時間を守るんだ。そう言って、教師が行動で示してやれば生徒もそうなるということです。実際、3日でまともになりました。
一方で、何もやろうとしない生徒も残ります。エプロンを持ってこないと配膳室に入れないという決まりですが、エプロンをわざと持ってきません。さて、そういう生徒にはどうしますか。(指名、対応)
貸出用エプロンが各学級に2セットずつあります。しかし、それでは足りない。よって、余分に用意しておいて、事前に渡します。私も着ますしね。マスクだって、1枚の値段はたかが知れてるじゃないですか。だから箱で買っておく。もらった生徒は「ありがとうございます」と言うわけですよ。そうやって条件を整えておいて、一緒に取りに行って、一緒に配膳もさせる。
前年度の悲惨な状態を知る管理職がそれを見て「奇跡」と言った。小学校時代から学年に3〜8人、毎日毎時間ヘルプが入るほど大変な学年でしたから。「廊下などに待機してもらう方は1人も必要ないですよ」と言ったのが4日目です。
次に、具体的な対応事例を見てみましょう。日常的に、男子数名が小学校時代から教室を荒らしていたのを自慢しています。「俺たちはさ、校長も来たし、六年のときは教師が8人も来て授業をやっていた。でも、言うこと聞かなかったよな〜」と。こういう時に何と言いますか。(指名、対応)
長谷川 博之
NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。TOSS埼玉志士舞代表。日本小児科連絡協議会「発達障害への対応委員会」委員。全国各地で開催されるセミナーや学会、学校や保育園の研修に招かれ、講演や授業を行っている。また自身のNPOでも年間20回ほどの学習会を主催している。
※この記事は2016年2月1日発行の『TOSS特別支援教育 第2号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。
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