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<暴言を吐く子…どう対応する?>原因を見つけて、個に合った対応をする

暴言を吐く子は、心が追いつめられて不安で一杯なのだ。自分の心を守るために暴言を吐く。安心させることが肝である。

新潟県公立小学校 本間尚子

 平山諭氏の『満足脳にしてあげればだれもが育つ !』(ほおずき書籍)の2ページ目にこうある。

心が追いつめられると、脳は不安(不快)物質の分泌が高まり、《自分を癒したり》《他人を攻撃したりする》心の守りを起こさざるを得なくなる。これがいわゆる二次的問題である。

入学段階の子供で、教師に暴言を吐くほどに心が追いつめられている子は、幼稚園・保育園、そして家庭で、相当に叱責され罰を与えられたと考えられる。

低学年で「暴言」と言って思い出すのは、一年生男児A君。A君の私への暴言は、テストの返却時が主だった。
テストで100点がとれない時に、その事実を受け止められず、「こんなの俺のテストじゃない !」「これは、先生が書いたテストだ !」と吠えて、90点、95点のテストを破いて床に捨てること複数回。
落ち着いている時にA君に「95点も合格だよ。とってもいい点数だよ」と話すと、「だって、お母さんが『こんなに簡単な問題で100点がとれないなんて、頭が悪い』って言うんだ」「100点じゃないと叱られる」と、ぼそぼそと話してくれた。

一人っ子のA君に母親は期待をかけていた。放課後は塾の掛け持ちの毎日。

お母さんの、「0点〜95点はダメで、100点だけが、良し !」というこだわりが、A君のこだわりになり、A君の心を不安にしていたのだ。A君に効果があったと思われる対応は、主にこの3つだ。

①担任(私)の体験談を話す。
②テストの期待得点を教える。
③ 「どんなことがあってもA君のことが好きだ」と何百回でも言い続ける。

母親と学期に1〜2回ペースで話し合う時間も持ち、A君の特性と良さを事実で伝え、対応策を関連書籍を活用して具体的に話した。同時に母親の愚痴も聞き続けた。すると、母親の対応が変わりA君の暴言は、激減した。


・小学一年生男子 診断なし
・負けを受け入れることが苦手で、ジャンケンで発表の順番を決める時、負けた瞬間に女児の胸をグーでパンチした。(4月)
・母親が勉強に関して厳しい。
・ちょっとでもうまくいかないことがあると「俺は、ダメだ」と吠えたり、壁や机を蹴ったりする。
・叱っても褒めても怒る。心の振れ幅が大きくなると言動が乱れる。


NG対応 叱って止めさせ、興奮している時に指導する

目が三角になって怒っている状態の時に、教師まで怒りのオーラを出して「止めなさい!」「そんなことしちゃダメでしょ」などと言うのは、火に油を注ぐだけ。自分の思いを受け止めてもらえないと思うと、さらに興奮と怒りが増す。

効果のあった対応1 担任(私)の体験談を話す

A君が落ち着いている時に、「私はね、小学1年生の時に20点とか40点とかとったことがあるよ。90点、95点なんて凄くいい点数だよ。全然ダメじゃないよ」と言うと、「先生は、頭が悪かったの?」と聞くので、「悪かったかもしれないね。でも今は、ちゃんとこうして働いているよ」と話すと納得した顔をした。その後も「90点は立派です。先生が子供の頃より頭がいい!」と言うと落ち着くようになった。【失敗してもくじけず、自分を許すための対応】

効果のあった対応2 テストの期待得点を教える

テストを配付する前に、A君への対策としてクラス全員にテストの期待得点(業者が設定した得点)を毎回教えた。テストで100点じゃなければ「ダメ」「頭が悪い」のではなく、テストは8割主義でつくられていて、合格の「幅」があることを教えることで、安心感を与えることができた。【0-100思考からの脱却】

効果のあった対応3 何があってもA君のことが好きだと言い続ける

どんなにA君が暴れた後でも穏やかな口調で、「~することは、いけないことだよ。でも、何があっても先生はA君のことを嫌いにならないよ。好きだよ」と言い続けた。すると、悪い事をした後に報告に来るようになった。【愛情の注入】


※この記事は2016年6月1日発行の『TOSS特別支援教育 第3号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。https://www.tiotoss.jp/