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★新年度特別企画!★ 小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第41回 【4月〜5月の発達障害の子供たちをケアする③】

「ささエる」編集長・小嶋悠紀の連載も1周年を迎えました!
 この4月~5月は、新年度特別企画として、「4月〜5月の発達障害の子供たちをケアする」を連載いたします。
 この記事をお読みくださっている先生方、ぜひ、新年度の指導にお役立てください。
 また、保護者の皆様には、新年度の子供たちの様子について、「ああ、そういうことだったんだ!」という理解を深めていただけることと思います。

 毎月第1・3木曜日の更新です。メンバーシップ限定記事ですが、第1木曜日はどなたでもお読みいただけます。
 今回は第1木曜日ですので、どなたでもお読みいただけます!


読者の方々がこの記事を読む頃には、いよいよGWに突入している時期だろう。
 先生たちも子供たちも、新年度開始からの緊張感の中で気疲れしている。ぜひ、たくさん休憩をとってほしい。
 さて、つかの間の休息が終わり、GW明けの1週間が過ぎたころから、
「発達障害のある彼らの本当の姿」
が見えてくるようになる。
 1つの状態像として下記のようなものがある。

① 「『緊張状態で無理をしている』という状態が終わるので、無理なものはやりたくない」

 前回までに述べているように、「緊張状態で無理をしている」ことは長続きしない。
 ある意味で「過剰適応」なので、疲れが出てしまう。そこまでの行動が「習慣」にまで結びつかないのだ。
 ここで多くの先生がびっくりしてしまう。
「いや、だって4月はできていたでしょ?」
「4月は何も抵抗感なくやっていたから、指導すれば戻るでしょ?」
というように考えてしまう。
 すると、
「強い指導を選択して、なんとかやらせ切らせようとする」
ということも起こってしまう。
 最初は渋々、やるかもしれない。しかし、これは長続きしない。
 だんだんと抵抗は強くなっていく。
発達障害の子供は、力に対して抵抗する場合に「怒りと激しさ」で示す。
 また、それに対して先生は「さらに大きな力で押さえつけようとする」という対応をしがちであり、その結果、悪循環の繰り返しが完成してしまう。
 実は、発達障害の子供と担任の先生との関係が壊れやすいのは、この5月からなのだ。
 それは、「過剰適応」を見破れず、その後に学習や活動を拒否した発達障害の子供を「力で指導した」結果なのかもしれない。 

②これまでに出さなかった「リミットテスティング」を表出して教師との関係性の駆け引きが始まる

 学級づくりをする上で、教師は4月にかなりのエネルギーを使う。
 定型発達の子供たちは、4月にある程度の「リミットテスティング(お試し行動)」を終えている。またそれらを教師が裁く場面を見て、「この先生は、この場面や行動ではしっかりと線引きをする先生だ」ということが分かっている。
 しかし、ASDを始めとする発達障害があると、そのような
「周りの空気から学ぶこと」
「周りの状況から判断すること」
が苦手であるために、4月にリミットテスティングで学習できないことの方が多い。その上、4月の1か月間は発達障害の子供たちにとって過度な緊張期間であるが故に、リミットテスティングを経過できない。
 そこで、5月となって、これまでの我慢していた分もリミットテスティングを開始するようになる。
 この時に先生は、
「4月の指導で分かっているはずだ」
「教えているはずなのに」
とリミットの線引きを曖昧にしたまま指導を行ってしまう。
 そして、教師との関係性の中で「自分の思いをどこまで通せるのか?」ということを、次々に時期を変えて試しにくる。
 先生方は
「全体指導したのでクラスの他の子は分かっているのに」
「発達障害の子供のリミットテスティングのため、個別に線を引かなければならない」
という難しい状況に置かれる。
 これらのことを分かっていて対応できるかどうかで、その後の1年間が決まる。
 次号では、これらの状況における先生方の支援と指導のポイントを公開する。


●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。


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