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まずは関係性を良くすることに専念しよう

特別支援を要する子供だって、信頼できる大人の言うことは聞こうとする。問題行動に対しては、注意叱責するよりも「共感から始める」ことが大切だ。

宮城県公立中学校教諭 三浦裕司



1 身近な教師が「信頼できる大人」になる

今年度、自閉スペクトラム症傾向のA男を担任しています。A男には以下のような特徴が見られます。


①他人との距離感が掴めず、とても近い距離で顔を近づけて話す
②納得がいかないことがあると、机をバン! と叩く
③女子生徒に対して触ったふりをしたり、時に直接触ったりする
④我慢の限界を迎えるとパニック状態になり、クールダウンが必要
⑤被害妄想が強く、相手の言動の一部を拡大解釈して恐れてしまう


以上の事柄に対して、「減らしたい行動は無視。許せない行動は止める」の原則に従って対応してきました。

その時に大切にしてきた心構えは、「その子がした行動に対して注意し、人格否定はしない」ということでした。

自閉スペクトラム症傾向のA男にとって、「身近な教師が一番信頼できる大人であること」が最重要だと感じたからです。

結果として、関係性が少しずつ良好になってきた2学期以降は、よく私の話を聞いてくれるようになりました。

2 共感から始める

A男はよく、教師や生徒同士の手伝いを率先して行ってくれます。

授業で使用する教具の準備、終わっていない係の仕事、プリントの配付等、よく気付いて行ってくれます。

それに対して私は「A男ありがとう、助かるよ」「A男がいてくれて本当によかった」など、肯定的な言葉掛けをしてきました。

するとA男は、さらに励むようになり、「先生、前もって〇〇しておきました!」など、私の先回りをして動くようになったのです。

それらの良い行動を、時に学級全体の前で取り上げ、A男に対する周囲の見方も良くしていくよう努めました。

3 周りの生徒にとって、教師の対応が見本になる

A男に対する教師の対応は、生徒に対するモデリングになっています。私が彼に対して注意叱責を多くすれば、学級の生徒も注意叱責を多くするようになるでしょう。

一方、共感や褒めることを多くすれば、学級の生徒もまた、そのような対応をするようになります。

A男と半年以上関わってきて分かったこと。それは、彼が不適応な行動を見せるのは主に休み時間や行動の自由度が高い技能教科の授業である、ということでした。

私が目の前にいる時には、さまざまな不適応行動に対応することが可能ですが、それ以外の時間にはそれが不可能です。ですから、彼が不適応行動をした時には、意図的に、彼に対する対応を周囲にも見せてきました。

例えば机をバン!と叩く行為に対しては、「イライラしているんだね」「(イライラの)ゲージが溜まってるね」などと声掛けをし、共感する言葉から始めるようにしました。

それを見た周囲の生徒の関わりも、少しずつ温かく柔らかい対応になってきた実感があります。


© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan

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