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その子を知り、居心地の良い環境を整える

好きなもの・苦手なことを知り、好きなものを揃え、苦手なことに折り合いを付けさせる。

北海道公立小学校教諭 吉田沙智



普段から大人しく、とても真面目な頑張り屋さん。そんなお子さんから表情が消え、頭痛や腹痛の訴えがあり、登校渋りが起きます。
こうなったら、二次障害を疑った方がよいです。
このような状況にさせてしまった苦い経験が、私にもありました。
Aさんもその1人。私はその時、以下の対応をしました。

■面談もしくは家庭訪問をし、これまでの頑張りをねぎらい、適度に休むことの大切さを伝える

「頑張りすぎるほど頑張っていたから、心も体も疲れてしまったんだね」と、これまでのAさんの頑張りをねぎらいました。「これからは、そうなる前に休もう。休むことも大切なんだよ」と伝えました。

■本人のストレスを探り、ストレスへの対応策を次々と打つ

Aさんにこれまで学校生活で辛かったことを尋ねました。
Aさんは言葉にできなかったので、私が代弁するように思い当たることを1つ1つ尋ねました。
Aさんは、首を振るだけならば反応できました。
学習面では、Aさんに合った学習内容に変更しました。
生活面では、「苦手な人と席が近いことによるストレス」「集団にいることによるストレス」があるとわかったので「苦手な人とは席を離す」「給食は先生と別教室で食べる」「集会は後ろで先生と聞く」等、ストレスへの折り合いの付け方を提案し、本人に決めてもらいました。
それらは、Aさんにとって「頑張ること」でした。実行できたら「よく頑張ったね」とねぎらいました。「がんばり貯金」として、グラスにビー玉を1つずつ貯めることにしました。Aさんの頑張りを、目に見える形にしたのです。

■本人の好きなことを探り、環境を整える

Aさんが好きなことや好きなものを教室に揃えていきました。
Aさんは動物が好きだったので、おうちで飼っている動物の写真を持ってきてもらい、アルバムにしました。いつでも眺められるようにしたのです。
Aさんは物づくりも大好きだったので、授業の一環として「ビーズブレスレットづくり」や「レジンのキーホルダーづくり」等の教材を準備しました。
Aさんはお笑いも大好きだったので、授業を早く終えるとタブレットで一緒にお笑い番組を視聴し、一緒に笑う時間をつくりました。
Aさんは「UNO」や「マンカラ」(ビー玉などの石を使ったボードゲーム)遊びが好きだったので、授業の一環として「UNO」や「マンカラ」を準備し、笑顔や会話を引き出すようにしました。
教室環境も学習環境も「Aさんが好きな」「Aさんが楽しめる」コンテンツを用意し、できるだけ学校をAさんにとって居心地のよい環境になるよう整えました。

Aさんは、適度に休みを取りながら毎日登校し、卒業していきました。
本当ならば、これらの取り組みは春休みからすべきです。
春休みから担当するお子さんについてよく知り、しっかりと準備をすることをお勧めします。


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