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‟こだわりの強い子”からクラスの人気者になったAくん

その子のこだわりを「得意なもの」に変えることができるのは、大人の考え方次第!

兵庫県公立小学校教諭 堀田和秀



4年生のAくん。注意欠如・多動症(ADHD)の診断を受けており、こだわりの強い子でした。言葉によるコミュニケーションが苦手で、衝動的に物を取ったり、人を叩いたりすることがありました。
彼のこだわりは、「タブレット」でした。タブレットを触り始めると、授業が始まってもやめることができません。1時間中タブレットをしていることもありました。

1.Aくんのこだわりに「共感」する

切り替えが苦手なAくんへの対応を考える時に参考にしたのが、小嶋悠紀氏の『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全』(講談社)です。

Aくんの行動が一区切りついたのを見計らって、まず「共感」する言葉をかけました。

Aくんは、プログラミングがしたいんだね。それにしても上手だなあ。

Aくんは、ニコッと笑って、どんなプログラミングを作ったのかを詳しく教えてくれました。これで、「Aくんは話を聞いてくれる」と思いました。

2.Aくんに「選択」させる

もちろん、このまま授業中にタブレットを触っていることを容認はしません。でも、無理やりやめさせると、余計にこだわりが強くなり、やめられなくなります。そこで、私は次のように言いました。

Aくん、2時間目、3年生は算数の授業です。今、タブレットを触っていたら、休み時間を削って勉強します。今、触るのをやめて勉強したら、休み時間タブレットを自由に触れます。どっちにする?

Aくんに、2つの選択肢を出し、選ばせるようにしました。Aくんは、「休み時間にする」と言うことがほとんどでした。自分で決めたことは、きちんと守ることができます。Aくんは、納得して授業に参加することができるようになりました。

3.Aくんのこだわりを「得意なもの」として紹介する

Aくんは、プログラミングでゲームを作るのが得意でした。そこで、私は彼に「プログラミング会社(※1)」を作らせ、休み時間にどんどんプログラミングをやってもらいました。そして、他の子に伝えました。

プログラミングのことで分からないことは、先生よりもAくんに聞いた方がいいよ。

この話以降、Aくんのところに、プログラミングのことを聞きたい子が集まるようになりました。いつの間にかAくんの机の周りには、友達がいっぱいになり、Aくんも「これは、こうしたらいいんだよ」と伝えるなど、コミュニケーションが取れるようになりました。
こだわりは、時として「その子の得意」になります。その子のこだわりを、どのように日常生活や学級に生かすかは、大人の考え方次第なのです。


※1 「プログラミング会社」とは、学級で行う係活動の1つで、当時「〜係」というよりも「〜会社」とネーミングすることで、子供たちのワクワク感をもたせるようにしていました。


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