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<暴言を吐く子…どう対応する?>過剰に反応せず、第三者からの褒め言葉で暴言に勝つ

その子が得意なことを見つけ、他の子供たちから褒め言葉を引き出す。

広島県公立中学校 銭谷和樹

以前の勤務校で出会った中学二年生女子Aさん。
教師の指示や注意に対して、「うっせえ」「きもい」「死ね」を連発する。「できたね」と褒めても、「きもい」と言う。
授業中、嫌な空気が教室に流れる。他の子供にも悪影響を与えかねない。
私はAさんの社会科の教科担任だった。
どう対応しようかと考え、大きく次の3 つの対応を基本方針とした。

Aさんは、指示に従うかどうかは別にして、学校のほとんどの教師に対して暴言を吐いていた。そのことから、Aさんの暴言は反射的に言ってしまう言葉のチックだと考えた。
注意しても逆効果だと判断し、肯定的に無視するポジティブノーリアクションを取った。しかし、他の子供への意図的な暴言は別だ。「そのような言葉は言いません」と毅然と感情を入れずに短く注意した。

そして、褒める場面。個別ではうまくいかなかったので全体の前で褒めることにした。A さんには特技があった。「ノートまとめ」だ。イラストも描き、とてもきれいにまとめていた。授業でA さんのノートを紹介した。見せ方がポイントだ。まずはノートを見せるだけ。「お〜」と子供たちから声が挙がる。
次に、「Aさんのノートです」と発表する。「Aさん、すげえ」と自然と子供からA さんの名前が出る。そして、ノートを最前列の子に見せる。「きれい」「すごい」と声が挙がる。
子供たちからAさんへの褒め言葉を出させるようにした。友達が少なかったAさんはとても嬉しそうだった。

この対応の後、授業中の暴言は徐々に減っていった。二学期には、私が教室へ行くと毎回のように話しかけてくるようになった。

①  反射的暴言にはポジティブノーリアクション(存在は認めるが、減らしたい行動だけを無視すること)
②  意図的暴言には感情を入れない注意
③  良いことには友達からの褒め言葉


・中学二年生女子 診断なし 学力は中位。
・教師の指示や注意に対して、暴言を吐く。
・少しでも注意されると「うっせえ」「きもい」「死ね」と言う。
・怒られているわけではない時でも上記のような言葉を言う。
・廊下で友達と軽くぶつかっただけでも暴言を吐く。
・友達は少ない。
・ノートまとめが得意。


NG対応 暴言に取り合い、注意叱責する

Aさんの暴言に対して「なぜそんなことを言うのか」などと取り合っては逆効果である。むやみに注意叱責するとさらに暴言が返ってくるだけである。授業もその都度ストップしてしまう。そのような対応をとってしまうと信頼関係を築くことはできず、指導が入らなくなってしまう。

効果のあった対応1 反射的暴言にはポジティブノーリアクション

反射的な暴言に対しては、小嶋悠紀氏のセミナーで学んだポジティブノーリアクション(肯定的無視)で対応した。暴言を言っても、特に取り合わず授業を次へ次へと進めた。こちらが取り合わないので、それ以上は言ってこなかった。

効果のあった対応2 意図的暴言には感情を入れない注意

他の子供への意図的な暴言には「そのような言葉は言いません」と毅然と感情を入れずに短く注意した。しつこく注意すると、さらに暴言が返ってくる。本当にやってはいけないことだけを注意するようにした。

効果のあった対応3 良いことには友達からの褒め言葉

得意なことを全体の前で取り上げて褒めた。教師が個別に褒めるよりも、他の子供たちから認められたり、褒め言葉を言ってもらえたりすると、とても嬉しそうだった。この対応後、暴言が徐々に減っていった。


※この記事は2016年6月1日発行の『TOSS特別支援教育 第3号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

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