小嶋悠紀の特別支援教育コンパス第31回 【日本で真のインクルーシブは実現できるのか?①】
2023年4月より「ささエる」編集長・小嶋悠紀の連載が始まりました!
「ささエる」本格オープンの11月からは毎月第1・3木曜日の更新となりました。メンバーシップ限定記事ですが、第1木曜日はどなたでもお読みいただけます。
今回は第1木曜日ですので、どなたでもお読みいただけます!
今、インクルーシブ教育がブームと言っていいのかも知れない。
「子供たちの多様性を尊重し、障害のあるなしなどにかかわらず、すべての子供を包含する教育方法」がインクルーシブ教育の概念である。
2006年の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」で示され、誰もが相互に人格と個性を尊重し、支え合い、「人々の多様なあり方を相互に認め合える共生社会の形成」を目的としているというものだ。
では、このインクルーシブ教育について、率直な現場の感想を下記に一言で述べたい。
「理想は分かる。しかし、今の学校現場で出来るわけがない」
これを役所や文部科学省の方々が聞いたら、
「それを何とか工夫してやってもらいたい」
と言うだろう。
それでも、現状の日本の特別支援教育の枠組みでは、「厳しい」ということを現場の方々も私も感じている。
私は、アメリカで「インクルーシブ教育」の「世界最先端の現場」を目撃している。
公立の小学校でインクルーシブ教育が実現している光景は身震いがするほど感動的だった。
「アメリカで成功しているのであれば、日本でも出来るじゃないか!」
と言う方もいるだろう。
だが、そんな簡単なものではない。
日本において、インクルーシブ教育を実現するには、以下の要素が必要であると考えている。
1)システムとしてのRTIモデルの確立と普及
2)より全体としてのアセスメントシステムの確立
3)より多様な特別支援教育を専門とするスペシャリストの育成
4)潤沢な教育予算の確保
それぞれについて、今後の連載で明らかにしていくことにする。
大切なことは「理想が先走らないこと」である。理想が先走ると「インクルーシブ教育は、実の伴わない綺麗事で終わる」のである。
また、本当に支援の必要な子供たちを「見放し」「放置」することにつながりかねない。
これらを防ぐために、私が見てきた実際の経験から日本におけるインクルーシブ教育の可能性と限界について示していこうと考えている。
●小嶋悠紀プロフィール●
本誌編集長・元小学校教諭
(株)RIDGE SPECIAL EDUCATION WORKS 代表
大学当時より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、全県の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に特別支援の講演を行う。NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。
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© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan