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<ミニ特集>あの子の学習の苦手さに対応する合理的配慮(小学校高学年)

成功体験を積み重ね、無気力状態から立ち直る

児童の実態に合わせた手立てを、保護者の理解と協力を得て行う。

愛知県公立小学校教諭 星野義和

 小学校六年生A児。授業中は教科書やノートを出さず、机に突っ伏していた。保護者は、「できなくてもいいから、他の子と同じことをさせてほしい」と言う。できないことが積み重なり、無気力状態にあった。
対応1 保護者の理解を得る
 保護者には、実態調査の結果やA児に必要と思われる手立てを伝え、了承を得た。よかれと思っても教師が勝手に行うわけにはいかない。その後、電話や連絡帳、一筆箋などで、折に触れてA児の様子を保護者に伝えた。
対応2 成功体験を積み重ねる
 授業の中で、A児に「できた」を数多く経験させる手立てを打った。最も効果的だったのは、「赤鉛筆指導」である。
 算数では、授業が始まる前に、A児のノートに日付、ページ、問題番号、式を赤鉛筆で薄く書いた。なぞるだけだが、A児にはとても時間がかかる作業だった。私はA児がノートを持って来ると、「よく書けたね」と声をかけて丸を付けた。しばらくすると、A児は休み時間に私のところへノートを持って来るようになった。だんだん前向きに学習するようになっていった。
対応3 実態に合わせて挑戦させる
 1学期末に行った漢字50問テスト。A児が答えられたのは10問程度だった。そこで、10問ずつ5回に分けてテストを行うことを、保護者に提案し了承を得た。
 私が漢字練習帳に赤鉛筆で問題を書き、A児が家で練習する。翌日、学校で10問テストをする。これを繰り返した。ある時、10 問テストを終えたA児が、「次の問題もやりたい」と言った。A児の漢字練習帳を見ると、自分で次の10問を練習してあった。
 漢字テストの結果とともに、保護者に連絡した。保護者は、「A児から『漢字を教えて』と言われて、一緒に勉強しました。A児が自分から『勉強したい』と言ったのは初めてです」とのことだった。


【特徴】
・小学校6年生。
・学力は小学校2年生ぐらい。
・授業に参加せず無気力状態が多い。
・保護者は他の児童と同様の扱いを希望している。
・通常の授業に参加するのは困難であった。
・実態に合わせた手立てが必要である。

NG 対応保護者の同意を得ずに行う

 合理的配慮は、どれほど優れた対応でも、保護者の同意を得ずに行うことはできない。保護者にとって、通常と違う対応をされることは、学校への不信感につながる恐れがある。

効果のあった対応1 保護者の理解と協力を得る

 A児ができたこと、うまくいかなかったこと、その改善策を保護者に伝え理解を得る。電話や連絡帳、一筆箋などを利用する。

効果のあった対応2 成功体験を積み重ねる

 算数のノートや単元テスト等で、教師が赤鉛筆で薄く書いた字をなぞらせ、褒めることで、「授業に参加できた」「できるようになった」という実感をもたせる。

効果のあった対応3 実態に合わせて挑戦させる

 A児にとって、漢字を50問覚えて書くのは難しい。しかし、漢字スキルテストの10問ならば覚えられる。50問テストを10問×5回に分けて、スモールステップで行う。詩文の暗唱等も、長いものは分けてテストを行う。


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