特別支援教育・悩みが消えるQA② 問題行動を繰り返す中2女子への対応は?
(回答者:長谷川博之)
Q 問題行動を繰り返す中学二年生女子への指導は?
中学二年生女子。中学校入学時から特別支援学級(自閉症・情緒障害学級)に在籍。WISC全検査IQ89。
両親・兄・妹との5人家族で、母親は現在、精神疾患で自宅療養中。一年時の11月頃(母親の不調と重なる)から授業に参加することができなくなりました。
問題行動は、1番仲の良い女子生徒と授業中校内を徘徊し、授業のエスケープ、空き教室への立てこもり、通りかかった生徒や指導に入った教師への暴言など。他校生徒との喫煙、補導歴まであります。
他の生徒に迷惑をかけない行為は無視し、必要最小限の職員であたり、集団の活動を優先しています。ダブルスタンダードにならないように、学年生徒への趣意説明を行っておりますが、肝心な本人への指導はどうすればよいのでしょうか。
A 傷つき体験を多く積み過ぎたのではないか。
質問に、重要な情報が圧倒的に不足しています。医者の診断はおりていないのですね。全検査IQが89あるのですね。ではなぜ自閉症・情緒学級に籍を置いているのでしょう。そもそも小学校六年間はどのような生活をしていたのでしょう。中学一年生の11月までは、授業中、どのような様子だったのでしょう。
また、確認ですが、特別支援学級に籍を置いたのは中学入学時からなのですね。
そもそも、小学校を通常学級で過ごさせておいて、学習上、生活上、人間関係上の失敗を数多くさせ、これでは駄目だと中学入学時に転籍させることは、ご法度です。その子供のそれまでの人生を強烈に否定する仕打ちとなるからです。
彼女はそのような無理解、理不尽に晒され続け、傷つき体験を多く積み過ぎたのではないでしょうか。そうでなければ、たとえ母親の精神疾患が発症しようとも、ご質問の状況にまで崩れることはないと思うのです。完全なる大人不信、学校不信の状態ではありませんか。
そのうえで、対症療法を示します。
1.朝、本人を笑顔にします。問題行動をしていない時間に関係性を向上させる工夫をします。趣味の話等でよいです。
2.交流学級に居場所をつくります。役割を設け、級友とのリレーションを高めます。「ふれあい囲碁」やレク等もよいでしょう。
3.エスケープした場合、ふたりを別々に指導します。どうしても授業に入れない時の居場所もつくります。対応する教師も決めます。方針を明文化しましょう。
4.並行して学習支援をします。本人ができること、楽しいことを学ばせます。
●長谷川博之プロフィール●
本誌副編集長・中学校教諭
TOSS副代表。NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。日本教育技術学会理事、事務局長。JP郵便教育推進委員。埼玉県公立中学校教諭。
全国各地で開催されるセミナーや学会をはじめ、年間80以上の講演や授業を行っている。主な著書に『生徒に「私はできる!」と思わせる超・積極的
指導法』(学芸みらい社)等がある。
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