<暴言を吐く子…どう対応する?>暴言は子供のSOS
学級の秩序を守り、安心させ、暴言を吐くこと以外に意識を向けさせる。
北海道公立小学校 高杉祐之
五年生のAくん。自分の思い通りにならないと暴言を吐いた。
「おい、こら殺すぞ」
「(担任に対し)お前の言ってることわけわからん。死ね。カス」
このような暴言を毎日耳にした。また、机を蹴り飛ばしたり、壁に飛び蹴りをしたりする行為も頻繁に見られた。周りの子はAくんに怯え何も話すことのできない状態になっていた。
Aくんの行動に対して、「怒鳴る」ことや「やめなさい」「何やってるんだ !」と否定的に話し始めることは全て通用しなかった。そのような指導をすればするほど、目は釣りあがり、暴言はエスカレートしていった。教室では、Aくんに同調し暴言を吐く児童が増えてきていた。そこで私がとった対応は以下の3つである。
睨む(首を振る)ことで、その行為は許されないということをAくんに気づかせることができる。また、周りの子供たちにも伝えることができる。これによって同調する児童も徐々に減っていった。学級の秩序を守ることにつながる。
次に、優しく声をかけることで、Aくんは暴言を吐くことなく、安心した様子で素直に話をしてくれた。先生は味方だよということを伝えることができたからである。怒鳴ることや「やめなさい」「何やってるんだ !」のような否定的な言葉ではダメであった。
最後に、褒めることで信頼関係ができる。また、暴言を吐いている最中でも全く違う角度から褒められることで、暴言が減ることが多かった。
この対応を続けた結果、六年生になった時には、暴言を吐くことがなくなった。そして、友達関係を築くことができるまでになった。
・小学五年生男子 診断なし 学力は中程度。
・落ち着きがなく、授業に集中できない。
・指示を聞き逃すことが多く、すぐに忘れやすい。
・ 休み時間は友達と遊ぶが、自分の気に入らないことがあると暴言を吐き、暴力を振るうことが多い。
・人に威圧的な態度をとるので、友達が少ない。
・キレると教師や友達など関係なく暴言を吐き続ける。
NG 対応 怒鳴る。否定的に話し始める
Aくんが暴言を吐いている時に、怒鳴って強制的に止めることや、否定的に話し始めるのは全く効果がない。それどころか、エスカレートしてしまう。教師も興奮状態になり泥沼状態になってしまう。信頼関係もできないまま、さらに悪化していく。
効果のあった対応1 睨む(首を振る)
Aくんにその行為は許されない行為であることを気づかせる。そして、周りの子供たちにも、その行為は許されることではないということを伝えることができる。Aくんの暴言に同調する児童も徐々に減っていく。
効果のあった対応2 「大丈夫。どうした?」と優しく声をかけて安心させる
「先生は味方だよ」ということを伝えることができる。神経伝達物質「セロトニン」を出させるのである。セロトニン5の「見つめる」「ほほえむ」「さわる」の対応も一緒に行うと、より安心感を持たせることができる。
効果のあった対応3 ちょっとしたことを褒め、暴言を吐くこと以外に意識を向けさせる
褒めることで信頼関係を築くことができる。また暴言を吐いている時に「嫌だったことを前よりしっかり言っているぞ」「また、心に思っていないことを」などと言い、他のことに意識を向けさせると良い。そして、出来るだけ早く授業に参加させるのが良い。
※この記事は2016年6月1日発行の『TOSS特別支援教育 第3号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。
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