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<あなたのお悩みを人気講師がずばり回答!>悩みが消えるQA 第1回①

先生方から寄せられた質問に本誌編集長・副編集長が回答するコーナーです。
パニックになる子、不登校気味の子に対して、教師は何をするべきか。小嶋先生、長谷川先生がお答えします。


質問1

小学校一年生の男の子です。通常学級です。何でも一番でないと気がすまない子です。小学校入学前に、発達が遅れていると病院で言われています。両親、兄、弟の5人家族です。家庭では、パニックになることはないです。

少しでも教師の指示に遅れてしまうと、パニックになり、ノートをぐちゃぐちゃにしたり、破ったりしてしまいます。できるだけパニックにならないように、ノートに書くことを赤鉛筆で書いたり、次にやることを、他の子たちよりも先に指示しておくようにしたりします。しかし、少しでも自分より速い子がいるとパニックになってしまいます。

速いだけがよいことではないと理解させるためには、どのような対応をしたらよいのでしょうか。

回答1 小嶋悠紀先生

この質問をアセスメントするにあたり、重要な項目が2つあります。

1つは「家庭ではパニックはない」ということです。これは、学校の中、つまり集団における何かしらの刺激がパニックを誘発していると考えられます。2つ目は、「遅れると」「自分より速い子がいると」という表現です。これは、「自分が遅れる」と、「遅れてはいないけど自分より速い子がいる」という2つの状況でパニックになるということです。

パニック対応をする上で重要なことは「パニックにならないように支援すること」です。できるだけパニックになりにくい状況を教師がつくります。この子は、過去の経験で、競争をさせられて、さらに失敗経験があり、その原体験のためパニックになっている可能性があります。

また、集団という周りに人がいる状況がパニックを誘発する1つの危険因子かもしれません。できるだけ、「競争」を誘発するような、指示や授業におけるパーツをつくらないことです。

次に、「価値観を多様化するほめ言葉」をたくさん用いることです。教師のほめ言葉を聞いていると「速い」という言葉がとても多くなっていることに気がつきます。このような子供は、その言葉にこだわってしまい、それが唯一の価値観となってしまいます。「丁寧だね」「ゆっくりと書いてみよう」「いろいろな場面で、いろいろなやりかたがあるんだね」と価値観が「速い」に偏らないようにしていく必要があります。

小学校一年生なので、このようなことを繰り返し、脳が成長してくると、こだわらなくなることが考えられます。


小嶋 悠紀
大学時代より発達障害の青年たちの余暇支援活動団体を立ち上げ発達支援に関わる。卒業後、特別支援を要する子供たちへの支援を中心に講演活動を行う。長野県養護教諭研究協議会において、県内の幼・小・中・高・特の1000名の養護教諭に講演を行う。
NPO法人長野教師力向上NETでも発達支援者育成部門を担当。


※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

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