<第3号ミニ特集>若手教師の特別支援教育実践②
特別支援教育に携わる若手教師たちが合宿を行い、それぞれの実践を報告し合いました。若手たちのフレッシュな実践の数々をご紹介いたします!
(構成:「ささエる」編集部)
6、すぐにキレてしまう子供への効果的な言葉がけ
すぐにキレてしまう4年生のA児に対して、1年間かけて、共感の言葉を掛け続けた。
「やりたくねえんだよ!」「そうか、やりたくないんだよな」
「あいつうぜえ」「そうか、うざいのか」
そのあと、何に対してキレているのかをはっきりさせた。
(学校行事で体育館が使えなくなって)「なんで体育館使えないんだよ!」「誰に怒ってるんだ?」「学校に」「そうか(笑)」私に対して怒っているのではない、というアピールはしていた。そのあとで、少しずつ指導を入れた。
「怒る気持ちは分かるし、他の人も同じことを思っているのを、○○さんは言葉にしたんだよな」「でも、聞いている人から、『○○さんが怒ってる』と思われると損だよな」「少しボリュームを落としてごらん」「もし我慢できた時があったら先生に教えてね」
あの手この手で、少しずつキレる回数は減っていった。
(小松和重)
7、自分が嫌いな子供の自尊心を高める手立て
「お父さんからもたたかれるんで、別におれは大丈夫です」
友達を蹴ったB児に「自分がされたら怒るでしょう?」と問うたときに返ってきた答えだ。父親からたたかれたのは、母親、兄、本人に聞き取ったが、3年前の話のようだった。
今も続いているわけではないということから、保護者とは「B児は大人の入り口に立っています。〇〇しなさいという言い方はしてほしくないのです。どんな関わり方をしていきましょうか」という話をした。母親からは、「起こさないと怒られるんです。でもそこから手放して、少しずつ大人として扱えるよう気を付けてみます」との返答があった。
3か月後、朝の母親とのけんかは減ったようだった。学校に来た時の表情も少し明るくなった。学校でのトラブルが減ると、父親とけんかすることも減ったようである。しかし、本人の自己評価は「大嫌い。幼稚園になったころから自分のことが嫌だった」である。根はもっと深く、今の自分を認められる手立てを、さらに考えていく必要があると感じた。
(丹羽美雪)
8、こだわりの強い子供が謝れるようになる対応
不安感の強いC児。10月に行われた音楽発表会の練習で、練習を休んだ。その後、クラスの友達とのつながりでトラブルにもなった。嫌なことを伝えても改善してくれないということだった。2つのことが重なった結果、行きたくないと言い学校を休んだ。
その日の放課後、同僚と一緒に家庭訪問。次の日から1日中教師の隣で一緒に過ごし続けるようになった。母親が学校訪問をし、1日中子供のそばにいる日もあった。トラブルについて両者とも納得がいくようにそれぞれの話を聞いた。事実を確認し、学校で過ごしている中で、伝えたと思っていても相手には伝わらない声で伝えていること、トラブルになった児童も空間認知の問題で友達とぶつかったことに気付いていないことが分かり、トラブルが減っていった。
保護者と連携をしながら対話を絶えず続けることで見えてくることがあると分かった。
(虫明周吾)
9、「ソーシャルスキルかるた」を段階的に取り組ませて、負けを認められるようになった
なんでも1番じゃないと気が済まない、ゲームで負けると受け入れられず、暴れてしまう児童がいた。「五色ソーシャルスキルかるた」(教育技術研究所)を対戦で行ったが、1回もできなかった。そこで、対戦ではなく、練習で自分一人でとることから始めた。最初は隣の子の方が早かった時に怒っていたが、「落ち着いて、腹が立ったら 深呼吸」を得意札にして、その札は確実に1番にとれるように練習した。と同時に、イライラしたら深呼吸できるように何度も札の言葉を言って、合言葉にした。1月には、チャレランで負けてしまっても、「○○ちゃんすごい」と拍手を送ることができるようになった。
(柳町直)
10、長谷川流 個別支援「五段階理論」を校内アセスメントと研修に入れる
中学校の生徒への教師側の個別支援の関わり方における「五段階理論」を長谷川博之氏が作成した。第1段階の信頼回復から第5段階の確かな所属感の獲得に向けて、一対一対応から集団力学活用へ徐々に移行する。これを基に校内のアセスメントシートを作成した。集団不適応を起こす生徒に対してのアセスメントを教師がするうえで使用する。第一段階の①相手のスキを好きになる。では、生徒の好きなことを書き、それを教師が好きになり、アプローチしていく。そして、どの段階にあるのかをアセスメントし、キーパーソンである担任や、その他の教員関係者のアプローチについて考えていく。
(柳町直)
<③へ続く>
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