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<先生の指示に従わないあの子…どう対応する?>心に余裕を持ち、肯定的に接する

評定、細かい評価、ハードルを下げることで指示を受けとめるようになった。

石川県公立小学校教諭 山田一郎(仮名)

数年前に担任したA子は、指示通りに行動することを、とてもいやがった。また、指示されたことと逆の行動をすることも、多々あった。指示に従わせようとして強い口調で指示をすると、反発し、机に突っ伏したり、机を教室の隅に移動したりして、何もしなくなってしまった。
そんなA子に効果があった対応は、次の3つであった。

対応1 一人一人の行動を評定する
対応2 肯定的な評価を細かく行う
対応3 求めるハードルを下げ相手に合わせる

対応1 一人一人の行動を評定する

教科書を出さなかったときは、「教科書を机の上に出している人に合格と言っていきます」と告げ、座席の順で「合格」「不合格」と言っていった。すると、自分の番が近づくと教科書を机の上に出した。このとき、A子だけを評定すると反発したので、全員を評定するようにした。また、漢字スキルに取り組まなかったときは、「一人一人覚えたかどうかテストをします」と告げると、自分から練習を始めた。

対応2 肯定的な評価を細かく行う

A子が教科書を開いていたら「今、教科書を開いている人は行動が速い」、鉛筆を持ったら「今、鉛筆を持っている人は賢い」と、肯定的な評価を細かく行った。A子は、個別に評価をされると、逆に反対の行動をとることがあった。そこで、全体の中で、できていることを評価するようにした。全体の中で評価されることはうれしいようだった。これによって、A子との関係がよくなり、指示をきけることが増えていった。

対応3 求めるハードルを下げ相手に合わせる
最初は、A子に合わせると、「何もしなくなるのでは」と不安に思った。しかし、合わせることで、心に余裕をもつことができた。心に余裕をもつと、A子と肯定的に関わることができるようになった。その結果、A子が指示をきくことが増えていった。



・小学校四年生女子 診断名なし
・「したくない」「できない」と思ったことはしようとしない。
・注意をし、行動を促すと、促した行動と反対の行動を行う。
・厳しい口調で指示をすると、机に突っ伏してしまう。
・全体の前でほめられると、反対の行動を行うときがある。
・自分がしたいことは、やめようとしない。
・友達に気にいらないことを言われると、キレて暴言を吐く。


NG対応 厳しい口調で指示をしたり、叱ったりする

指示に従わないA子を、指示に従わせようと思い、厳しい口調で行動を促すと、「死ね」「うざい」等の暴言を吐かれた。暴言に対して、こちらも腹が立ち、口調はさらに厳しくなってしまった。結局、最後は、言い合いのような形になってしまった。その結果、A子は、机に突っ伏し、何もしなくなってしまった。これは、叱ったときも同様であった。

効果のあった対応1 一人一人の行動を評定する

指示したことをしていたら「合格」、していなかったら「不合格」と評定していくと、指示に従った。A子だけを評定したときは反発したので、全員を対象に評定を行った。

効果のあった対応2 肯定的な評価を細かく行う

肯定的な評価を細かく行うことで、A子との関係がよくなり、指示をきくことが増えていった。またA子は、個別で評価されることを好まなかったので、「今、鉛筆を持っている人は賢い人です」等、全体に対して評価を行った。

効果のあった対応3 求めるハードルを下げ相手に合わせる

「この時間はここまでできれば十分」と考えるようにし、すぐに指示の通り行動しなくてもくどくど言わないようにした。こちらが心に余裕を持つことで、A子と対決姿勢にならず、肯定的な関わり方をすることができた。


※この記事は2016年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 第4号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

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