<“あの子も変わった”教室での実践記~通常学級編~>情緒の安定が変容につながる
学校ぐるみの特別支援体制が、子供の大きな変容に結びついた。
埼玉県公立中学校 星野優子
1.厳しいスタート
自閉スペクトラム症のY子は、小学校時代から集団参加が難しく、通常級に在籍していたものの、授業には参加できていなかった。
IQが高いことを理由に、小学校時代、支援級への入級検討はなし。中学校も通常級に入学した。
生育歴も複雑で、情緒の乱れが激しく、登校してきても廊下に大の字で寝転ぶ毎日が続いた。起こそうとすると「触るな!」「寄るな!」「私を殺してくれ〜!」と叫ぶ。
教室に入っても、授業には参加せず、ずっと絵を描いているのみ。とてもではないが、通常級での生活は厳しい状態にあった。
2.対応
学校として行ったのは大きく次の3点である。
時間割は、1時間目に別室でその日の予定確認、2〜4時間目のうち1時間を相談室でのソーシャルスキルトレーニング、5時間目に1日の振り返りというようにした。
また、支援員にほぼマンツーマンでついてもらい、なるべく否定せず、粘り強くよい面を褒めてもらうようにした。
さらに、市の支援課に家庭支援に入ってもらった。足の悪い祖父母と3人で暮らしているY子の家を、定期的に支援センターの職員が訪問することで、家庭生活も落ち着きを見せた。
3.得意な面を伸ばす
さらに、Y子の得意な面を伸ばせるような声かけを、職員全体で共有した。
Y子が興味を持っていたのは歴史と絵を描くことだ。歴史上の人物を描いたカードを数百枚自作し、毎日学校に持ってきた。
最初は「不要物」として持ってくることを禁止することも考えたが、Y子にとってそれはとても大切なものであることを踏まえ、「授業中は教室に持ち込まない」というルールの下、持ち込みを許可した。
1時間目に1日の予定を立てた後、支援員の先生とカードを並べながら話すのがY子の楽しみになっていた。
次第に情緒が安定し、描く絵が変わってきた。最初は血を流すような絵ばかりだったが、最近は落ち着いた人物画や、風景画を書くようになった。表情も別人である。学校全体で取り組んだ、Y子への支援体制の成果である。
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※この記事は2016年6月1日発行の『TOSS特別支援教育 第3号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。
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