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<あなたのお悩みを人気講師がずばり回答!>悩みが消えるQA 第1回②

(①つづき)

質問2

小学校四年生の女の子です。現在、不登校気味です。通常学級です。

二年生の秋頃から❝登校しぶり❞が始まり、三年生で欠席は20日、遅刻が100日以上だったそうです。
四年生になって、一学期は欠席が15日、遅刻が20日程度です。

母子家庭で、中学校一年生の姉と3人暮らしです。父親は、本人が一年生の時に亡くなっています。

本人は、「学校には来たい」と言っていますし、来たら子供たちと仲良くやっています。「学校は楽しい」とも言っています。

スクールカウンセラーによると、父親が亡くなった時のトラウマが残っているのではないかということです。

このように、不登校の原因が家庭環境にある場合、教師はどのように対応すればよいのでしょうか。
 

回答2 長谷川博之先生

フロイト、ユングと並び、「心理学の三大巨頭」と称されるアルフレッド・アドラーは、トラウマの存在を否定しています。

彼の心理学は、過去志向の「原因論」とは対極に位置する、未来志向の「目的論」です。
「人間の行動には、その人特有の意思を伴う目的がある」と考えるのがアドラーの立場です。
この立場からすると、本案件でスクールカウンセラーが言う「父親が亡くなった時のトラウマが残っている」は、当てはまらないことになります。
トラウマ肯定と否定、どちらが正しいかを言いたいのではありません。どちらが本児の未来を明るくするか、だと私は考えます。

父親が亡くなったという過去は、変えられません。
当然、悲しかったことでしょう。ただし、7歳という発達段階で、何をどう感じたのかを明らかにするのは難しいと思います。
物事の捉え方の点で、大人の感情と大きく違うのは確かです。

過去の話はここまでです。

現在10歳になった本児は「学校には来たい」「学校は楽しい」と述べているのですね。

それなのに「登校しない」「遅刻する」という選択をしているわけです。
この選択をすることで何を得ているのか。
あるいは、何を避けているのか。

私ならばそこを見極める努力をします。行動分析の手法です。

最後に、「子供たちと仲良くやっている」とありますが、これは誰から見ても、どの時間もそうでしょうか。
学習状況はどうでしょうか。
学級に居場所(活躍できる場所)があるでしょうか。

家庭環境に原因があるという一般論のもとでも、私たち教師にはできることが複数あります。


長谷川 博之
NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。TOSS埼玉志士舞代表。日本小児科連絡協議会「発達障害への対応委員会」委員。全国各地で開催されるセミナーや学会、学校や保育園の研修に招かれ、講演や授業を行っている。また自身のNPOでも年間20回ほどの学習会を主催している。


※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

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