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多動を正しくアセスメントし、適切な対応をする

多動の原因は大きく分けて「注意喚起」「要求」「逃避」「感覚刺激」の4つである。

長野県公立小学校教諭 竹内進悟



授業中に離席する児童がいたとします。この児童に、どのような対応をすればよいかと考える前に、その行動の原因を考える必要があります。なぜその行動が引き起こされているのか、という背景によって対応が異なるからです。
いわゆる子供の不適応行動には大きく分けて4つあると言われています。「注意喚起」「要求」「逃避」「感覚刺激」です。

1 「注意喚起」

いわゆる「見て見て行動」です。自分に注意を向けてかまってほしいために取っている行動です。こういう子供は、離席したり物をたたいたりしながらも、ちらっと教師を見ることがあります。これは注意喚起のサインです。このような場合、基本的には対応をしない方がよいと言われています。相手にすることで、よりその行動が強化されてしまうからです。見えてはいるけれど、原則「無視」をした方がよいです。逆に不適応行動が見られなかったときに褒めてあげることがとても重要です。

2 「要求」

子供にとって、何か良いことを得るための行動です。例えば、暴れることによってゲームができる、大声を出すと食べたいものが出てくるなど、これまでの経験をもとに誤学習が起きていることが多いです。このような場合、行動しても要求したことが起こらないことを学習し直さなくてはいけません。例え、行動がエスカレートしたとしても行動が変化するまで根気よく待つことが必要です。

3 「逃避」

「獲得行動」とは反対に、何かから逃れるために行っている行動です。例えば、「算数の時間になると教室を出ていく」など、特定の教科の授業のときに不適切行動が多く見られる場合などは、これに当てはまるでしょう。この場合、選択肢を教えてあげることが効果的です。暴れる、教室から出る、ものを投げるなどの行動でしか、その子にとっては避ける方法がなかったからです。例えば算数がいやな場合、先生に相談する、問題を減らす、落ち着ける場所で勉強する、1人でやるなど、他の方法で回避できた体験を積むことが大切です。

4 「感覚刺激」

脳が刺激を求めているために起こしている行動です。例えば、いすをガタガタさせる、体を動かす、ドアをずっと開けたり閉めたりする、ふらっと席を離れて歩き出すなど、特に本人も意識せずに自然と出てしまうような場合です。これは、このような行動を取ることで精神が安定しているのです。その子の脳が「動け」と命令していることであり、本人の意志ではどうしようもないことなのです。しかし、時に大きな音を立てたり、さけんだりするなど、授業の邪魔になってしまうこともあります。感覚刺激を求めている場合は、授業の中で子供の活動を取り入れるといいでしょう。このような子供の姿が見られる場合は、授業で子供が座りっぱなし、聞きっぱなしということが多いです。例えば、立ったり歩き回ったりしながら音読する、英語では3人の人と対話したら席に戻る、算数で2人に説明したら次の問題に行く、など、ちょっとした動きを取り入れることで、その子の脳が落ち着きます。
いずれの場合においても、強く注意する、子供同士で注意させるなどは効果がなく、むしろ二次障害を引き起こす可能性が高くなります。行動の原因を探り、適切な対応をすることが必要です。


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