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<先生の指示に従わないあの子…どう対応する?>指示に従わない子も、苦しんでいる

指示に従わない子は、反抗しているのだから、私は勝たなくてはいけないと思い叱っていた。

静岡県公立小学校教諭 手塚美和

「え〜。めんどくさい」
「やだもんね〜」
 
こう言って教師の指示に従わない子。カチンとなって、思わず叱ってしまったことが何度もあった。
 
なぜ、彼らはカチンとくる言葉を言うのだろう。
 
希望に胸をふくらませて入った小学校。数ヶ月で読み書き算の勉強が本格的になる。ペースもずっと速くなる。
 
その頃から授業の中で、何度も失敗体験をするようになるのだ。
 
周りの子はできているのに、自分だけできない。
 
つまり、彼らはこう言っているのかも知れない。

「え〜。めんどくさい」→(どう書けばいいかわからない!)
「やだもんね〜」→(前も失敗したから、もうあの辛さを味わうなんて嫌だ!)

そんな子供の悲しみの声が聞こえるようになると、指示に従わない子供への愛おしさが増してくる。教師の声、表情も変わる。
 
まずは、その子の辛さを理解することがスタートだ。
 
次に、あたたかい中にも、リズムとテンポのある楽しい授業を行うことだ。

TOSS技量検定D表に「あたたかな表情・対応」「心地よいリズム」という項目がある。リズムとは、教師の様々な表現にメリハリをつけることである。テンポとは話す速さである。
 
そして、『話す・聞くスキル』(正進社)などの優れた教材を使うこと。優れた教材を使うと、言葉を削って指導できる。
 
上手な先生が、実際にその教材を使って授業をする動画も正進社のホームページで見ることができる。いいイメージを焼き付けて授業したい。



【特徴】
・小学二年生男子
・注意欠如・多動症
・ 国語では、漢字を覚えるのが苦手。正しく音読するのが苦手なため、次第に、教科書を開かなくなってきた。
・ 算数では、大きな数を数えるとき、印をつけてもれなく数えることが苦手。
・鉛筆をかじったり、ノートを破いたりする。


NG対応 強く叱責をする

ノートを書かない、音読をしない、やることをやらない。文句を連発する。
指示されても知らんぷりをしていたり、悪態をついたりしているときには、「やらねばならぬ」という刺激をしてもあまり効果がない。
強く叱責をすることで、やる場合もあるが、出来ないことを我慢しているだけで、自己肯定感をあげることにはならない。かといって、その状態を褒める必要もない。

効果のあった対応1 リズム・テンポのいい授業で信頼関係を築く

授業の中で、5分でも10分でも、リズム・テンポよく授業するパーツを確保する。短い時間でも、授業に参加する楽しさを確保する。
メリハリのある教師の言葉、表情、心地よいスピード。優れた教材を持ち込むのがいい。

効果のあった対応2 教えて褒めて信頼関係を築く

子供のつまずきをとらえて、指導を細分化する。
例えば、自分で新出漢字を見て、指書きすることができない場合は、全体で、1回か2回の指書き練習を入れる。
算数で、何を書いていいのかわからないときは、式や答えを赤鉛筆で薄く書いてあげる。

効果のあった対応3 一緒に遊んで信頼関係を築く

授業で5分でも10分でも、自己肯定感をあげる指導ができたら、次は、一緒に遊んだり、特別なお手伝いを頼んだりして、他の場面でも信頼関係を深める工夫をする。
先生のことを好きになることが、苦手な学習への耐性につながる。


※この記事は2016年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 第4号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。https://www.tiotoss.jp/

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