こだわりへの理解と対応
こだわりが生じる理由を理解し、それを生かした授業をする。
北海道特別支援学校教諭 渡邊俊郎
l、思いを受け止める
自閉スペクトラム症(ASD)の方は不安を感じやすいと言われています。不安だから、自分が好きな物があると安心するのです。
ある一定のキャラクターを好むなどの、こだわりが生じるのはそのためです。
これらのこだわりは、恐怖や不安から生じている可能性があるからこそ、支援者はそのこだわりを受け止める必要があります。
2、こだわりを生かす
ハロウィンに関する物にこだわりをもっているASDのお子さんがいました。
このお子さんは集中が続かず、授業中何度も離席することがあり、なかなか授業に参加できませんでした。
私はこのお子さんのこだわりを生かし「ハロウィンかぼちゃを作ろう」という授業を考えました。こだわりをもっている物を教室の中に持ち込むことにしたのです。
そこで農家さんにお願いして、大きなかぼちゃをもらって来ました。子供たちは、大きなかぼちゃに乗ったり、かぼちゃを抱えたりして大喜びです。
私は「どんなハロウィンかぼちゃを作ろうか?」と子供たちに問いかけ、デザインさせました。
子供たちは、自分たちで考えて熱心に黒板に絵を描きました。
そして、みんなで協力してかぼちゃを台車に乗せ、玄関まで運びます。
こだわりがあるからこそ、熱中して取り組めます。ASDのお子さんは、クラスの友達と協力し、目、鼻、口を描き、中身をおたまでくり抜きました。子供たちは、ハロウィンかぼちゃを自分たちで作り上げることができました。
子供たち同士で協力し、相談しながら取り組めたことは、このお子さんにとって成功体験となり、人との楽しい関わり方を学ぶ良い経験となりました。
「みんなで一緒に活動すると楽しい」と身をもって知ることができたのです。
完成したハロウィンかぼちゃは学校の玄関に飾りました。
「すごいの作ったね!」とたくさんの先生方に褒めてもらうことができました。
そのお子さんが何にこだわっているのかを知り、それを生かした授業づくりをすることで、ASDのお子さんも、友達と協力して作業することを学び、周りの大人に認めてもらう経験ができるのです。
© 2023 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.Printed in Japan
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