見出し画像

<保護者からのSOSにドクター・専門家が答えます!>特別支援学級への入級が本当に本人のためになるのでしょうか?

特別支援教育では、子供の特徴を周囲が理解し、本人に無理がかからないことが大切である。

回答:医学博士 安原 昭博
構成:大阪府公立小学校教諭 和田 孝子


・小学校二年生(男)
・診断名 なし
・家族構成 父、母、兄、姉

●子供の様子
①状況や場に応じた話ができない。
②言葉通りの意味に受け取りがち。
③対人関係……休み時間の過ごし方がわからない、それが続くとボールを教室で投げるなどしてしまう。周囲からは認められているが、本人は友達がいないと思っている。
④漢字などが身に付きにくい傾向が強い。
⑤学習がわからないとき……突っ伏してしまう、立ち歩きをする、大きな声を出す。
⑥偏食が強く、食べられない物が多い。自分で量を調整できずに、そのまま捨てていたり、パニックになったりすることもある。
⑦アニメ「絶体絶命でんぢゃらすじーさん」が大好き。


●質問1●
特別支援学級に入級を勧められたけど、それが本当に本人のためになるのでしょうか? また本人にとって一番いい学校生活とはどのような生活なのでしょうか?

【安原ドクターの回答】
おそらく特別支援学級の方がいいと思われます。発達指数がわからないですが、高機能自閉症、または広汎性発達障害かと思われます。
どちらにせよ、特別支援教育をしていかないと難しいと思います。
楽しい学校生活とは、

みんなが彼のことをわかってあげること

が第一です。彼に対してどのように対応するかということについて、先生だけでなく、周りの子供たちも含めた環境づくりをしていかないといけません。

だから特別支援学級でないと彼が一番いい学校生活を送ることは不可能じゃないかと思います。


●質問2●
「状況や場に応じた話ができない」「休み時間の過ごし方がわからない」という特徴があります。保護者としてどのように接するといいのでしょうか?

【安原ドクターの回答】
「状況や場に応じて話ができない」ことはそんなに問題ではありません。
問題なのは、自分のことをマイナス思考していることです。
そして、誰かにパッと見られた時に、「あいつは俺の悪口を言っている」とか、「俺のことを嫌いに違いない」と思うことが問題なのです。

対人関係で休み時間にどうやって遊ぶかわからないということへの対応は、同じクラスの友達の理解がないと難しいと考えられます。
お友達が誘って集団の中に入れてくれるということがないと難しいでしょうね。
本人には

友達とはどういうものなのか

ということを教えないといけません。


●質問3●
漢字などが身に付きにくい傾向が強いです。どのように支援すればいいですか?

【安原ドクターの回答】
特別支援の観点をもって教えるということが大切です。
つまり、もう少し診断をしないといけません。

LDなのか?
環境要因なのか?
対人関係が苦手で空気が読めないのか?

推測はできますが、WISC等で詳しく検査をして、この子の得意な部分と苦手な部分を知ることが大切です。
彼の特徴を知るために、データは必須です。


●質問4●
偏食で食べられないものが非常に多いです。また、自分で給食の量を調整することができず、教室の床に捨ててパニックになることがあります。どうすればいいでしょうか?

【安原ドクターの回答】
こだわりが強く、本人が苦手だという食べ物は食べなくていいです。

「給食を教室の床に捨ててはいけない」ということを教えるためには、
「給食をすべて食べられなくてもいい」という教育をしていく必要があります。

給食を残しても、彼の人生にとって何の問題もありません。


●質問5●
最後に、彼にとっての一番いい学校生活とは、どんな学校生活でしょうか?

【安原ドクターの回答】
彼の特有の生活や性質、もしくは病気なのかわからないですが、彼の特徴を周囲が理解してくれて、本人に無理がかからないようにしていくことが大切です。


安原昭博(やすはら・あきひろ)
安原こどもクリニック院長。医学博士。
YCCこども教育研究所代表理事。関西医科大学小児科非常勤講師。専門は小児神経学、発達障害、電気生理学、発育障害。地域のADHDの親の会「大阪ADHDを考える会のびのびキッズ」を発足。主な著書に『ADHD・LD・アスペルガー症候群かな?と思ったら…』(明石書店)など。


※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/