無理に止めるのではなく、気が済むまでやらせる
こだわり行動のある中1男子。本人も周りの生徒もストレスのない授業にするためのスキルとは。
宮城県公立中学校教諭 川村護
「おい! 教えんなよ、バカ!」
支援を要する中学1年のA男の言葉。「メルボルン、見付けたら座ります」という地名探しは、社会科の授業で毎回一度は入れる活動。見付けられたら、まだ見付けられていない生徒にヒントを与えにいくように指示しています。早く見付けた生徒にとっても、空白の時間がなくなり、授業が間延びすることもありません。
これは、親切に教えようとした級友をA男がはねつけた場面です。「自分で見付けたい」「誰かに邪魔されたくない」というこだわりが強く、人が介入することを許しません。はねつけられた生徒には「親切にありがとうね」と私からフォローを入れます。ただし、A男は立ったまま。このままでは、授業が進みません。
小嶋悠紀氏の『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた声かけ・接し方大全』(講談社)には、「こだわり行動が見られたら、無理に介入するより、行動が終わるまで『待つ』ほうを選ぶようにしてください。」(p127)とあります。今回は、待つことにしました。だからといって、A男を待っていては、授業全体の流れを止めてしまいます。
「メルボルンはどこの国の都市ですか」
A男にはその活動を続けさせたまま、授業全体は予定通り進めました。そのうち「あ、あった!」と座ります。座ったことを確認し、目を合わせ、(「見つけられたね」と)頷き、その時みんなが見ている部分を指さします。自然とA男は授業の流れに復帰することができたのです。
集団で行っている以上、授業全体の流れを止めないことは重要です。しかし、支援を要する生徒に対し、教師の指示をそのとおりやらせ切ることは、とてもストレスのかかること。時には、納得いくまでやらせてあげることも重要なことです。教師がそのこだわりを受け入れてやることで、子供は安心して活動することができます。
子供のわがままではなく、脳の特性であると理解したうえで適切な対応をすることが、教師には求められています。
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