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<みんなが楽しく取り組める 脳トレ教材活用術>思考力をひろげる無限の可能性

『アタマげんきどこどこ』は中学生のやんちゃ君も夢中になる無限の可能性をもっている。

山形県公立中学校 山口俊一

1 子供のペースが基本

子供たちに渡すとすぐに始められるのが『アマタげんきどこどこ』(騒人社)の最大の魅力である。

そのため、ひとつひとつ教えないことが、ポイントとなる。

一度だけ導入に失敗したことがある。それは、「ワーキングメモリが強化されること」「注意力が高まること」「脳全体が活性化されること」を説明した後に、グループで競争をした時だった。

最初は、グループで1人だけが問題に取り組むルールにしていた。
しかし、周りで見ている子は自分もやりたいので、
「アドバイスしてもいいですか」
「教えてもいいですか」
という質問をしてきた。それを認めてしまった。それが原因で、グループ同士の進むスピードに差がつき、全体が混乱してしまったのである。

子供たちは、自分のペースで楽しく進めたいのに、勝ち負けがつくため、自分のペースで進められず、早く進む子もゆっくり進む子も両方が不満を持つこととなった。

集団の人数に対して教材の数が限られているため、起こった混乱である。

2 スムーズな導入

教師は説明しないこと。
子供のペースで進むこと。

この2つがポイントである。
 子供にまずやらせてみる。
その後で、子供たちに問う。
「この本は、どこを鍛えるの?」
すると、表紙を見た子供は、
「ワーキングメモリ」
と答える。
そして、また問う。
「ワーキングメモリって何?」
すると、吉川武彦ドクターの解説のページを見る。そして、
「頭の中のメモ帳」
と答える。
そして、また問う。
「鍛えられる2つの力は何?」
すると、自信を持って
「記憶力と注意力」
と答える。
そこで、初めて、教師が趣意説明をする。
「これは、ただの本ではありません。みんなの記憶力と注意力を鍛える本です」
その後で、注意を加える。

「注意力や記憶力には個人差があるので、その人、その人のペースで進めていいのです」
「本の数に限りがあるのでグループで進めることになります。その時、友達のペースに合わせてあげることも大切です」

そうした過程を経て、子供たちは、それぞれのペースで安心して進めるようになる。休み時間に、友達と一緒に挑戦するようになる。

3 次なるステップ問題発見

中学生は、どんどん先に進めるので、2週間も経たないうちに全問クリアする子が現れる。

その次の段階として、用意したいのが、

新たな「どこどこ問題」発見

である。
これにも失敗経験がある。
原因は、十分な時間を保障しなかった時のことだった。
「2分間で問題をつくります」
と指示を出し、紙に書かせることもなく、問題を出させた。
その上、どのグループが速くできるか競争させてしまった。
問題は簡単な上、正解が曖昧になり、混乱した。
その後、2つの条件をつくって再度実践したところ、子供たちは夢中になって取り組んだ。

条件① 問題は用紙に書くこと

出題者の名前、○ ○編、何ページと書き、問題を書くようにした。
1枚の用紙に1問を書くようにし、問題を考える時間は10分以上確保するようにした。

条件② 答えを見つけるのに、5秒以上かかるのが良い問題

と難易度を示した。

初めは、何かを探す問題だったが、次第に数える問題や注意して見ないと探せない問題を考えるようになった。

なかには、問題を考える時、

「考えるの、俺には無理だ」

という子供もいる。その時は、

「問題が思い浮かばなくても、考えているプロセスが、もう脳トレになってるんだよ」

と励ましの声をかけた。たとえ、5秒以上かかる問題を考えだせなかったとしても、考えている過程こそが脳トレになっていることを伝え、励ました。その後、

「お〜頭が良くなった感じがしてきた」

とあきらめず問題を考えるようになった。

4 視覚的なサポート

『かぞえてどこ? どこ?』では、複数を数えるため、覚えておくことが難しくなる。

そのため、赤い色のついた専用の輪ゴムを用意したい。赤いゴムがいい理由は、イラストの色と同化しないので見分けやすいからである。ただ、すぐに準備できない時には普通の輪ゴムで代用できる(実際には、色のついた輪ゴムがいい)。

輪ゴムで囲むことによって、数を数えるのが容易になる。周りで見ている子供も一緒に確認できる。

5 公費で購入する

現在、7冊のシリーズが発刊されている。私は「授業の研究で使いたいので」という理由で購入してもらった。 子供たちの思考力を広げるためにも優れた教材であることを伝え、ぜひ、学校の図書館に導入してほしい。



※この記事は2016年6月1日発行の『TOSS特別支援教育 第3号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。https://www.tiotoss.jp/