特別支援教育・悩みが消えるQA① 自分の要求を通そうとする中学二年生への対応は?
(回答者:長谷川博之)
Q 自分の要求を通そうとする中学二年生女子への対応は?
中学校二年生女子。通常学級在籍。愛着障害の疑いがあり、教師の言動を試す行為をして、自分の要求を通そうとする生徒です。両親、兄、妹の5人家族で、母親のしつけが厳しいため、愛着を形成できていない様子がうかがえます。
学校生活アンケート等には、「周囲に悩みを相談できる友人はいない」と回答することが多いです。要求は、「足が痛いので教室移動しなくていいか」「提出物を出さなくていいか」などです。話を受容する部分と、ダメなことはダメと伝える場面を見極めました。そして声を荒げず、淡々と対応することを心がけました。
一見こちらを試すような生徒に対して、どのように対応していくことが望ましいか、その具体的な対応方法や日常的な関わり方を教えていただきたいです。
A 行動面と人間関係面にアプローチしましょう。
中二で通常学級に在籍していながら、「悩みを相談できる友人はいない」と答えているところに、この生徒のコミュニケーション能力の低さを見ます。一般に、2、3の小学校が合流して中学校となりますから、学級の何割かは小学校入学時からの付き合いであるわけです。にもかかわらず、「いない」という所にアプローチすべき課題の存在を感じるのです。この生徒が周囲をどう見ているのか、周囲がこの生徒をどう捉えているのか。知りたい所です。その部分についての言及がないので、いっそうのアセスメントを
進めていただきたいと考えます。
学習面には問題がないようでしたら、行動面と人間関係面にアプローチすることになります。後者は先に述べましたから、残りの紙幅で前者を扱います。
行動面の課題は、お試し行動と利己的(と思える)要求ですね。
① 受容する部分と拒否する部分を見極める。
② 声を荒げない。
③ 淡々と対応する。
3点とも良いですが、とりわけ③が重要です。言葉で言うなら短時間で簡潔に行います。まなざしや身振り手振りで制するような、言葉を遣わない対応も時には有効です。どちらにせよ、あっさりとおこないます。なぜならば、何度も繰り返し指導することになるからです。「変化のあるくりかえし」の原則を使って取り組みましょう。成長を支えつつです。
●長谷川博之プロフィール●
本誌副編集長・中学校教諭
TOSS副代表。NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。日本教育技術学会理事、事務局長。JP郵便教育推進委員。埼玉県公立中学校教諭。
全国各地で開催されるセミナーや学会をはじめ、年間80以上の講演や授業を行っている。主な著書に『生徒に「私はできる!」と思わせる超・積極的
指導法』(学芸みらい社)等がある。
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