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こだわりをみんなが喜ぶ「役割」に変える

「あいさつ当番」なら、こだわりをみんなに役⽴つ「役割」に昇華できます!

北海道公⽴⼩学校教諭 五⼗嵐貴弘



4⽉、「先⽣、みんなが僕の⾔うことを聞いてくれません! ぼくなんかいなくたっていいんだ!」
2年⽣のタロウ君(仮名)が泣きながら繰り返し訴えてきました。
タロウ君は、こだわりが強く、⾃分が興味のあることや⾃分が正しいと思ったことを他の⼦にも強要してしまうことがありました。5⽉に地域の児童館で、友達を叩いてしまった時には、「僕なんか死んじゃえばいいんだ!」と⾃分を責めたり、⾃⾝の頭を叩いたりする様⼦が⾒られました。

⑴ 共感する

「タロウ君は、みんなにもきちんとルールを守って欲しいんだね」
と私が話すと、タロウ君は静かにうなずきました。このことを学活の時間に学級全員に伝えました。
学級の⼦供たちは、タロウ君のこだわりをよく分かっていました。
タロウ君との2⼈きりの約束ではなく、タロウ君の意を汲み取り、子供たちと共有し、⼦供たちが共感できるようにしました。それから1⼈、2⼈とタロウ君の気持ちに共感してくれる⼦が出始めました。

⑵ 相談する

私とタロウ君が相談して、みんなの役に⽴つ毎⽇の役割を決めました。「あいさつ当番」です。朝の会、帰りの会、挨拶の必要な時は全てタロウ君の役割にしました。
「あいさつ当番、やってみますか? タロウ君ならきっと⽴派にできるよ」
「いつ、あいさつしようか? 朝と帰り、どちらがいいですか?」「他にもしてみますか?」
こちらから⼀⽅的に押し付けずに、いつもタロウ君と相談しながら決めました。その後、学級で共有しました。
「みんな、タロウ君があいさつするよ!」と協⼒する⼦が出てきました。
初めは声が⼩さかったタロウ君のあいさつは、少しずつ⼤きく堂々としてきました。

⑶ 連携する

冒頭の訴えがあった⽇に、すぐに保護者に連絡しました。保護者の了解を得て、地域の関係機関にもタロウ君を⽀える仕組みを作りました。タロウ君の学校や児童館でのこだわりを⼼理⼠・保護者・児童館職員・教員の4者⾯談で共有し、指導の⽅向性を決めました。毎⽇の役割を決め、⾃⼰有⽤感を⾼める⽅策は⼼理⼠からも推奨され、今後も継続していくことになりました。

7⽉になり、タロウ君は「あいさつチームを作ってもいいですか」と、友達に呼びかけました。5名の友達があいさつチームに参加し、タロウ君と毎⽇あいさつのお仕事をするようになりました。この頃には、学級でも児童館でも「ぼくなんかいなくたっていいんだ!」という⾔葉は聞かれなくなりまし
た。


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