鉛筆削り器1つでもこだわりが表れる
「その子にとって大切なものは何か」を知ることの大切さを学んだ。
群馬県公立小学校教諭 田中健太
気に入らないことがあれば、暴言を吐き、男女年齢関係なく暴力を振るう子の支援員をしていました。授業中もできない問題があれば「できねえー!」「分からねえー!」と大声で叫ぶ状態でした。適切な対応によって、落ち着いて授業を受けられることもありました。
しかし、時折イライラし出すことがありました。
そのきっかけになるのは、一生懸命に漢字を書いたり、計算を解いたりしている時に、ポキっと鉛筆の芯が折れることです。その都度、違う鉛筆に持ち替えて書き始めますが、ついさっきまで使っていた鉛筆とは書き心地が違うと、さらにイライラしてしまうこともありました。
連続で芯が折れてしまうこともあるので、すぐに鉛筆を削れるように、教室には電動の鉛筆削りが1つと、手動の鉛筆削りが1つ常備されていました。電動は素早く削れ、削れ具合も一定のため、大変重宝していました。
ところが、ある日事件が起きました。
その子の機嫌が悪いということもありましたが、たまたま電動の鉛筆削りが不調でした。
良かれと思って、教室にある電動の鉛筆削りを渡して削らせました。
次の瞬間……「先生のせいで、鉛筆に傷がついたじゃねーか!!」と、さらに事態が悪化してしまいました。
よく見ると、削る際に鉛筆を固定する部分(写真の挿入部)【画像1】の跡が鉛筆についてしまっていました。そのことが癪に障り、その子は大激怒してしまいました。
そこで、良い鉛筆削りはないかと色々調べてみると、鉛筆の挿入部分にゴム【画像2】がついていて、傷がつかない設計になっているものを見つけました。
電動の鉛筆削りは手で持って削るため、この固定する部分がないのです。これまで気が付きませんでした。今回、挿入部分だけでも2種類の鉛筆削りがあることを知りました。
削る刃も、削り過ぎ防止のため自動で止まるものや、空回りをして削れないようになっているものなど、様々な鉛筆削りがありました。
色々なメーカーの鉛筆削りを集め、機嫌の良いときに、私の新品の鉛筆を削らせてみました。
最終的に彼は、自分のコンディションによって削り具合を変えられる手動のものを好んで使うようになりました。
この時に学んだのは、「親に買ってもらったものを大切に使いたい」という彼の思いでした。「その子にとって大切なことは何か」を考えることの大切さを、その子が教えてくれました。教訓としたいです。
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