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<あなたのお悩みを人気講師がずばり回答!>悩みが消えるQA 第2回

先生方から寄せられた質問に編集長・副編集長が回答するコーナーです。中学生のパニックや逆ギレに対しての本人や周りへの指導について、今回は長谷川先生がお答えします。

回答者:埼玉県公立中学校教諭 長谷川博之
(構成:千葉県公立小学校教諭 小松 和重)

質問

中学校一年生、通常学級の女子です。
父母と、妹が3人います。数学がわからなくてパニックを起こしたことがあり、「わからない」と叫びながら床に座って泣きました。
また、着替えをするとき、男子がいても構わず服を脱いでシャツになったり、背中やパンツが見えたまま体育座りをしたりしています。
授業中は不規則発言が多く、近くの人につばを飛ばすくらい接近して「友達だよね、ね」と何度も聞くことがあります。
「がんばれる?」「クールダウンする?」「今はやらないよ」などと声をかけていますが、「わかってる!」「できないんだからしょうがないじゃん!」と逆ギレされる状況です。
担任として、彼女も周りの生徒も安心できるような指導や声のかけ方を教えていただきたいです。

回答 長谷川博之先生

該当生徒は中学一年生の女子なのですね。障害特性ももちろんですが、知的発達の遅れも気になります。心理検査や個別の知能検査の実施は必須でしょう。
保護者の承諾を得るために、教師がもっている情報を整理し、「何のために検査するのか」を明確に述べる準備を徹底します。
そのためには、ここに挙げられた情報では足りません。突っ込んでみます。

1.数学がわからなくてパニックを起こしたことがある。その際、「わからない」と叫びながら床に座って泣いた。
→どんな活動をしていたのか。突然叫び出したのか、外部刺激があったのか。

2.着替えの際、男子が近くにいても構わず服を脱ぐ。
→着替えの場所は決まっているか。生徒はその場所を知っているか。頻度はどうか。急いでいただけではないか。

3.背中やパンツが見えたままでいる。
→本人は気づいていて直さないのか、そもそも気づいていないのか。

4.授業中は不規則発言が多い。
→不規則発言とは何か。どの教科、どの教師の授業でもそうなのか。

5.級友に過度に接近し、「友達だよね、ね」と何度も聞く。
→この行動の前にどんな出来事が起きたのか。ABC(※)のパターンはないのか。

6.教師の指導言に対し、「わかってる!」「できないんだからしょうがないじゃん!」と「逆ギレ」する。
→教師の発話と伝え方に問題はないのか。どの場合でも「逆ギレ」するのか。たとえばこれらを知らないと、適切な助言は難しいのです。


※ABC分析(応用行動分析のひとつの手法)のこと。


長谷川 博之
NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。TOSS埼玉志士舞代表。日本小児科連絡協議会「発達障害への対応委員会」委員。全国各地で開催されるセミナーや学会、学校や保育園の研修に招かれ、講演や授業を行っている。また自身のNPOでも年間20回ほどの学習会を主催している。


※この記事は2016年2月1日発行の『TOSS特別支援教育 第2号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
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