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<みんなが楽しく取り組める 脳トレ教材活用術>自然とコミュニケーションが形成される

吉川武彦医学博士が監修した注意力が高まる・ワーキングメモリをきたえる絵本

茨城県公立小学校教諭 桑原 和彦

騒人社から『ワーキングメモリをきたえる アタマげんきどこどこ』の絵本7巻が発刊されている。

この絵本は、日本初のワーキングメモリをきたえる絵本である。この絵本で「見つける」「数える」「さがす」などに取り組むことができる。
これまで市販されている「もの探しの絵本」とは明らかに違う。ワーキングメモリをきたえるという画期的な絵本だ。現在全7巻。
続巻も予定されている。

特徴を以下に述べる。

①脳全体が活発になる

「さがしてどこ? どこ? どこ?」……例えば「ソーセージを食べてる子『おいしい!』」という文が掲載されている。
文章を読んでから、過去の記憶を呼び起こし、そのような子を想起する。頭の中で文章と映像(イラスト)を同期させ、絵本から探すのである。
こうした行為が脳全体を活発にさせる。このセリフから探すということが、エピソード記憶につながる。
そんなことあった! おいしいと言いそう! と思うわけである。

②注意力を高める

「かぞえてどこ?どこ?」は、絵のあちこちに眼を動かし、いろいろなものを探して数える。
うっかりすると数え間違えをしたり、探しているうちに何個探したのか忘れてしまったりする。
そうしたら、再び挑戦するのだ。この体験は、注意力を高めることにつながる。子供たちは、夢中になって数える。
こうやって、紙面全体を見渡してから、対象物を見つけるという経験を積むと、算数のイラスト問題や、図工における絵画の構成などにも役立つ。

③ワーキングメモリをきたえる

「みつけてどこ?」は、絵にかかれている課題を見つけるものだ。
それぞれの絵の特徴をつかんで、それと同じ絵を探す。
つまり、目で見たものを覚えて探すという作業が必要になる。ワーキングメモリの中でも「絵などを目で見て覚えるためのワーキングメモリ」「視空間スケッチパット」をきたえることになる。
さらに、この絵には吹き出しがある。吹き出しを読むことで、過去の体験を思い出す。
そこから「かつての経験を思い出し覚えておくワーキングメモリ」である「エピソードバッファ」を使うことになる。

④コミュニケーション形成

複数の子で、絵本をのぞき込みながら読みだす。
すると、大抵、どちらが早く見つけるかという自然な競い合いになる。いつの間にか熱中する。
その中で、問題文を一緒に読んだり、問題文からイメージするイラストを友達と同期させたりと展開する。
1人ではできない行為が生まれる。
また、会話や譲り合いも生まれ、発達障害児のコミュニケーション形成にも一役を担うことになる。

⑤新たな発見

子供たちは、一度体験すると、この絵本の良さにすぐ気付く。
『どんどんページをめくってしまう』『すぐに熱中します』『絵を見ていると問題以外にも新たな発見があり楽しいです』といった声が挙がる。
自分たちで、新たな問題を出し合ったり、そこにまつわるストーリーを話し出したり、子供たちの発見度は果てしない。それを引き出す良さがこの絵本にはある。

学校生活において、ワーキングメモリがきたえられれば、防げる問題は多々ある。
話や文章を覚えられず、何回も聞く。注意深くものを探す、数える。
問題文や教師の指示を正確に捉える、想起できる。このようなことにつながる。

学級文庫に置いておくと、休み時間ごとに、1人が読みだすと、みんなが自然に集まり、本を取り囲むようになる。自然と会話が生まれる。コミュニケーション活動にもなっている。

とても良い本だという手ごたえがあったので、司書教諭に「図書室へ入れてほしい」と購入希望を出した。
すんなりと通り、図書室の棚に並んだ。ところが、これがまた人気で、いつも貸し出し中である。
一年生から六年生まで学年を問わずだ。次年度は更に1セット追加購入された。


※この記事は2016年2月1日発行の『TOSS特別支援教育 第2号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
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