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特別支援教育・悩みが消えるQA①

自閉スペクトラム症の中学生への進路指導
(回答者:長谷川博之)

Q 自閉スペクトラム症の中学三年生男子への進路指導は?

 中学三年生男子。特別支援学級在籍。自閉スペクトラム症。療育手帳B2、精神障害者保健福祉手帳3級を取得しています。高校の進路について、保護者は特別支援学校普通科の職業コースを希望しています。保護者と生徒で学校説明会と教育相談にも行きましたが、生徒は「通学するのが遠い」(自力通学のみで電車とバスで1時間)「小学生・中学生と一緒がいい」という理由で地元の特別支援学校高等部(スクールバスで40分)を希望しています。
 本人の能力的には職業コースに合格する力があり、自力通学もできます。担任としても将来の就職のためには職業コースが望ましいと思います。保護者や担任と本人の希望が異なった場合、どのように進めていけばよいのでしょうか。

A 教師の仕事ではなく家庭の問題です

 特別支援教育の範疇に限らず、親子で進路希望が異なるのはよくある話です。
 これは教師の仕事の問題ではなく、家庭の問題です。
 我々教師はあくまでも話を聴き、サポートを行うことに徹します。
 サポートの原則は3点です。
 第一に、親子の対話を促すことです。
 問題の根底にはコミュニケーションの不足があります。互いに主張するだけではらちが明きません。歩み寄りや擦り合わせが必要なケースも多々ありましょう。親にも子供にも、学びの機会と捉えてもらいましょう。
 第二に、進路先に関する教師の考えは、強く求められない限り公表しないことです。
 進路決定は重大案件です。生半可な知識を披露したり、無責任な提案をしたりすることは控えます。「サポートに徹する」とは、そういう意味です。
 第三に、最終的には子供本人の希望を優先することです。
 なぜか。通うのは親ではなく、本人だからです。「親が言ったからそうした。本当は行きたくなかった」という理由(言い訳)で不登校に陥るケースは少なくありません。本誌でも以前から何度も述べている「自己決定権は尊重するが、主導権は渡さない」の原則を適用するのです。「あなたが決めたのだから、がんばってやり切りなさい」と言う方が、後々親も楽になるのです。
 ここに書いたのは長谷川の原則です。ケースによっては例外的な対応をすることもあり得ます。参考までに。

●長谷川博之プロフィール●
本誌副編集長・中学校教諭
TOSS副代表。NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。日本教育技術学会理事、事務局長。JP郵便教育推進委員。埼玉県公立中学校教諭。
全国各地で開催されるセミナーや学会をはじめ、年間80以上の講演や授業を行っている。主な著書に『生徒に「私はできる!」と思わせる超・積極的
指導法』(学芸みらい社)等がある。

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