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誰にも否定されない、応援される安心感を生徒集団でつくっていく手順を教える

戸惑う生徒には、他の生徒が自然にサポートするしくみをつくる。励まし合いからできるようになっていく成功体験を、教師がつくりだす。

愛知県公立中学校教諭 辻拓也



バスケットボール部の新チームが始まりました。
3年生が引退し、1年生はほとんどが初心者。
2年生も半分は初心者で入部してきた生徒たちです。
初日の練習は、3年生がいた頃と同じメニューから始めました。
個人練習はスムーズでしたが、2人組になると1年生は動きに戸惑いました。
練習そのものは見てきたから知っています。けれども、実際にやると難しいのです。
中でも1人の生徒は、パスを出したら動きが止まります。
次、移動するのですが、動きと動きの間で必ず止まります。
さらに、どこに動けばいいかが分からず、戸惑います。
「走って」
2年生が指示しましたが、混乱してしまい、ボールを持ったまま走り出しました。
周りが困った顔をしたので、私は言いました。
「一緒に走って教えてあげなさい」
2年生が横について走ると、その子は正しくできました。
「できた!」
私は力強く褒めました。近くにいた2年生がハイタッチしていました。
その生徒は、次も同じ場面でつまずきました。
それでも、2年生が横について走ると正しくできました。
「さっきよりすごく良くなった!」
私は力強く褒めました。2年生がハイタッチしました。
何度やっても同じことの繰り返し……
でも、繰り返すうちに、2年生は自然とフォローするようになっていきました。
「すごい! さっきより早くなった!」
しばらくして、誰もつかなくても、動けるようになりました。
その瞬間、自然に拍手がわき起こりました。

練習後、私は全員に言いました。
「今日、何度も練習が止まりましたね。そのたびに2年生が一生懸命教えていました。
これまで3年生が君たちにやってきてくれていたことをちゃんと引き継いでいます。
どんなにうまくいかなくても、苦しい時こそ、励ましなさい。励まし続けなさい。
あせらず、あきらめず、教え、支え続ける「誰か」に、あなたがなりなさい。
ステキなチームに仕上がっていきますからね」

1か月ほど経った今、その生徒は他の子と同じようにできるようになっています。


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