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<先生の指示に従わないあの子…どう対応する?>指示に従わない子をいくら怒鳴っても何も変わらない

怒鳴ることで子供の信頼を得ることはできない。

埼玉県公立中学校教諭 森田健雄

A君は「落ち着きがない子」として小学校から引き継ぎがあった生徒である。

授業中に自分が話したいことを大声で話し始めてしまう。叱られると、ふてくされて、指導が入らない。クラス内でのトラブルが多く、人間関係が上手くつくれないなどの特徴があった。

中学入学前も、中学に入学してからも、A君は授業に集中できず、突然しゃべりだすことがあった。毎日のようにクラスの生徒と口げんかになり、トラブルが絶えなかった。

そんなA君への対応で私が気を付けていたのは次のことである。

① ダメなことはダメだと落ち着いて伝える。
②対応が必要ない時には無視をする。
③ A君が授業中に活躍できる場面をつくる。

このようなことに気を付けていると、A君の対応で困ることはあまりなかった。

ある日、そのA君がきれてしまい、手のつけられない状態になってしまったというので、様子を見に行った。

私が会った時、A君は興奮して、肩で息をしていた。納得のいかないことで怒鳴られたこと、無理やり教室の外に出されたこと、この2つがA君がきれてしまった原因だった。A君はいきなり怒鳴られたため、そのことしか考えられなくなっていた。

そこで、まずはA君を落ち着かせて、話を聞くことにした。そして、A君が話をしたことは全部、「そうなのか」「それは大変だったね」など受け入れながら聞いた。こちらが、受け入れられない話の時には、「そういう考え方もあるんだね」と否定せずに聞いた。

話を聞いていくうちに、A君は落ち着いてきて、自分の何が悪かったのかを認めることができた。

以前からA君の対応に気を付けていたからこそ、できたことだ。


【特徴】
・中学一年生男子
・診断名なし
・落ち着きがなく、常にしゃべっている。
・気分がのらないと授業に取り組まないこともある。
・自分が納得できないことで叱られると突然きれてしまう。
・ 友達と積極的に関わるが、上手くコミュニケーションをとれずに、トラブルになってしまうことがある。


NG 対応 問題行動に対して怒鳴る

A君の問題行動に対して、怒鳴って指導しようとした教師は失敗していた。なぜならA君は、怒鳴られたことばかりが頭に残ってしまい、なぜ指導されていたのかを考えることができなくなるからだ。
また、A君は怒鳴られるとふてくされたり、反抗したりして、さらに指導が必要になる。
A君を怒鳴れば怒鳴るほど、上手くいかなくなってしまう。

効果のあった対応1 ダメなことはダメだと落ち着いて伝える

A君の行為を何でも良しとするのではなく、問題行動があれば、A君を落ち着かせて話を聞き、「今の行動はダメだ。なぜなら〇〇だから」など、声のトーンを抑え、教師側も落ち着いて話をすることで、A君には指導が入りやすかった。

効果のあった対応2 対応が必要ない時には無視をする

A君のおしゃべりに対して全て対応していると、授業が進まなくなってしまう。特に授業と関係のない発言の時には無視して、その後、授業に取り組んだ時に、褒めることを繰り返すことが有効だった。

効果のあった対応3 A 君が授業中に活躍できる場面をつくる

A君は周りに認められたいという気持ちが強く、積極的に発表することが多くあった。そういう場面ではA君を思いっきり褒めた。時には、「A君のように、積極的な子が伸びていく」と全体に話した。


※この記事は2016年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 第4号』に掲載されたものの再掲です。一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

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