授業で下がった自己肯定感は授業で高める
発達障害傾向のある子は、授業で叱責されることが多い。「本当は目立ちたい」という気持ちを生かして、授業で活躍させよう。
宮城県公立中学校教諭 岡拓真
医師から注意欠如・多動症(ADHD)の診断を受け、学習障害(LD)の疑いがあるA男を担当したことがあります。
A男は、キレると周囲に対して手加減なく暴力を振るいました。小学校時代は、彼が原因となり、何度も学年全体が叱責を受けていたようです。彼自身もその影響で、自己肯定感が低く、それが言動に表れていました。
私は、彼の対応で、国語と理科の授業に入っていました。彼は自分ができないこと、分からないことを周囲に知られないように授業に参加しており、自分に解けない課題が出ると、不適切な発言を繰り返します。私はその都度彼の側に行き、教科書に指を置いたり、ノートに書くべき文章の最初の一文字を赤鉛筆で薄く書いたりして対応しました。それでも不適切な発言は起きるので、その度に彼と話し、彼とその周囲が授業に集中できるように促しました。
私は、せめて自分の授業では彼を活躍させたいと思い、全体の中で褒められる場面をつくるために試行錯誤しました。その1つが音読でした。
A男は、漢字がほとんど読めなかったため、音読させる時は次のように組み立てました。
彼は、この手順であれば音読をすることができました。事前の範読で読みを確認し、列音読により見通しをもち、自分の順番が来るまでに近くの友人に読むところを確認することができたからです。他の教科では音読をしなかったようですが、私の保健の授業では音読することができました。
授業で自己肯定感が下がったのならば、授業で高めてあげたい。A男を担当してから、現在もその思いを強めています。
© 2024 TOSS,The Institute for Teaching-Skill Sharing.
※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/