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<荒れた中学を立て直した! 人生を変える指導法>ABC分析で問題行動のパターンを見抜こう①

問題行動のパターンを見抜けば解決策が明らかになる。

埼玉県公立中学校教諭 長谷川 博之



授業力・学級経営力養成講座~プロ教師 長谷川博之氏が伝える教育の極意~
2015年7月、山形県山形市で開催。「あの子が変わる! 行動変容を促す特別支援の技術」をテーマに、支援を要する子供への具体的な手立てが紹介された。本稿では、このセミナーの一部をテープおこしで再現する。


1.子供をアセスメントする

先生方の目の前にいる、いわゆる手のかかるあの子にも、良いところがありますよね。ついつい問題行動に目がいきますが、良い面が必ずあります。

彼らの支援計画を書くためには、子供を見なくてはいけません。
今日は、そのためのシートを持ってきました。
前半は問題解決シート、後半は応用行動分析について共に学んでいきましょう。

特別支援で「ADHD(注意欠如・多動症)の特性はこうです」「LD(限局性学習症/学習障害)はこういう対応をした方がいいです」ということは、もう現場の先生方も知っているのです。それは分かっているのだけれど、実際に現場では対応ができていません。
なぜかというと、第一にアセスメントができていないからなのです。

「その子がなぜそうなのか」をこちらが推定できないから、知識では分かっているのだけども適切な対応ができず、結果が出ないのです。

何をやっていいか分からないから。
ですから、子供の状態や特性を見る力、アセスメントの力を鍛えたい。
そのうちのひとつがABC分析です。では、練習します。

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<解説>長谷川
 山形のセミナーには特別支援についての知識があまりない参加者や、目の前の荒れている生徒に困っている参加者も多数参加していた。そこで、本稿の中心であるABC分析についての話をする前に、「問題解決シート」について話をした。
 該当する子供の「強み」「学習面」「家庭的背景」そして教員が「今まで何をしてきたか」「その子の何をどこまで伸ばすか」等の項目について書き込んでいくシートである(バーンズ亀山静子氏作成のものを長谷川が改訂した)。
 本稿では、このシートの解説の後に行ったABC分析の話をテープおこしする。
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2.ABC分析シートの活用法

小学校四年生のある学級で、A君がとにかく荒れて困る。

学校中の先生に悪態をつく、先生方も彼の悪口を言っている、という状況です。
とにかく先生に反抗してしょうがない、自分の好きなことしかやらない、学習意欲が低いと言われています。そんな児童がいる学校に介入し、国語の授業を見たとします。

国語の授業の、ある場面を記録したのが上の表です。

私が記録を読んでいきます。皆さんはA君の問題行動に赤線を引いていってください。

1、教師が新しい単元を紹介しました。題名などから何の話なのかを予想させました。「ごんきつねってどんな話だと思う?」「きつねの話」、みたいなことです。

自分の飼っているペットに人前で恥ずかしい思いをさせられた人いますか、と児童に尋ねました。そうすると、「ハイハイハイハイ」と手を挙げたので、「A君」と先生が指したら、「飼っていたインコがかごから飛び出して、お客さんの頭にとまっちゃいました」と話しました。教師も周りも笑いました。

続いて教師が、「この話はA君も話してくれたように、飼い主に恥ずかしい思いをさせてしまったペットのお話です」と告げました。
そして、「何が問題だったのか、飼い主がどう感じたか、見つけながら読んでいきましょう」と言いました。

「じゃあ音読します、A君、どうぞ」と言いました。
すると、A君は教科書は持ちました。が、教科書を読むかわりに、関係のない、でっちあげの話をし始めました。話の中には、不適切な言葉も入っています。教師は、「やめなさい」と叱りました。周りは笑っています。

次に教師は、最初の行を自分で読みました。A君が読まないから。そして、「はい、じゃ、A君、次を読んでごらんなさい」と言いました。

8、A君はドカッと座って腕を組んで読むことを拒否しています。

9、教師はA君に「じゃ、もういいです。あなたには頼みません」と言って、別の子を指名しました。
 
10、その子がその内容を読んだ後、教師は、「この話に出てきた問題は何でしたか?」と尋ねました。
 
A君は挙手して「ハムスターがおばさんの帽子によじ登ってしまったことです」と言いました。教師は、「指されるのを待たないで言っちゃいけません」と注意をしました。「でも、今の答えが正解です」と告げて次の子を指名し、続きを音読させました。
 
よくある授業風景ですよね。
 
さて、A君の問題行動は何番でしたか? お隣さんに言ってください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ABC分析とは、応用行動分析の一つの手法であり、目の前で起こっている行動を、先行条件→行動→結果と一連の流れの中でとらえる方法である。
 
ABC 分析一行動の流れを科学的に観察しよう
Antecedent 行動の直前に起こったこと
Behavior 誰かがしたこと
Consequence 行動の直後に起こったこと
 
このように目の前の行動を分けて、具体的に考えることによって、行動の裏にある原因を分析し得る。そして、行動の先行条件を変化させることで、行動の変容を促すことができる。

ABC分析の手法・理論だけを学んでも、目の前の子供の行動を分析することは難しい。

そこで今回は、具体的事例をもとに、参加者に分析の効果を実感してもらう活動を仕組んだ。

A君の事例はよくある授業風景の1つであるが、この手法で先行条件・行動・結果と分けて記載することにより、問題行動を引き起こす原因が分かりやすくなる好例である。

さて、人間の行動は大きく2つに分けられる。その行動をすることによって何かを得る(注目、ほかの生徒からの承認、もの など)か、何かを避ける(嫌なことを要求される状況、恥ずかしい思い、罰、難しい課題 な
ど)かのどちらかである。

A君は不適切な言動を通して何を得ているのか、あるいは避けているのか。
この視点で行動を分析すると、見えなかったものが見えてくる。

「よくある授業風景ですよね」の問いかけに、たくさんの参加者が頷いた。
担任の教授行為も、A君の言動も、「よくあること」なのである。

では、A君の言動はなぜ「問題行動」といえるのか。A君はなぜそのような言動を選択しているのか。その選択によって彼が得ているものは何か。避けているものは何か。
このように分析的に考えると、A君に対する見方が変わってくる。

「たいへんな子」だという認識は簡単には変わらないかもしれない。すぐには結果が出ないかもしれない。

だが、「なぜそうするのか」を推定し、「どう対応すれば成果が上がるのか」を熟考することで、教師のA君に対する回避感情は着実に小さくなっていく。

アプローチ方法を検討すること自体が、接近感情に支えられた行為である。教師が接近感情をもって接すればこそ、A君の対教師感情も変わる。

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長谷川 博之
NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。TOSS埼玉志士舞代表。日本小児科連絡協議会「発達障害への対応委員会」委員。全国各地で開催されるセミナーや学会、学校や保育園の研修に招かれ、講演や授業を行っている。また自身のNPOでも年間20回ほどの学習会を主催している。


※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/

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