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負けを受け入れられるようになる「ソーシャルスキルかるた」

1日2分間の試合を毎日続けて、「参りました!」と言えるようになった男の子の話。

鳥取県立特別支援学校教諭 瀬尾啓文



今年度、特別支援学校の小学部で6年生を担任しています。
今回は、せなくん(仮名)という男の子の話です。
新学期に出会った頃、彼は負けを受け入れることに強い抵抗感をもっていました。
トランプの神経衰弱では、思うように札が取れず、
その度に「ああー!」と声をあげたり、机を拳でドンドン叩いたりしていました。

「五色ソーシャルスキルかるた」(教育技術研究所)をし始めた4月も、同様でした。
相手の友達が札を取ると「ぎゃーー!」と叫び声のような声を出したり、お手付きすると「もうやらん!」と突っ伏したりしていました。
ただ、トランプとは違い、1試合2分程度で終了です。
負けてもダメージはそんなに大きくありません。
このような小さな負けを毎日毎日経験しました。
半年経った今では、札を取られても気にしていません。
勝負に負けても、「参りました」と潔く負けを認められるようになりました。
「この学校に来る前は、腹が立つと物を壊していた」
「思い通りにならないと、僕は暴れていた」
そのように昔の自分を振り返ることができるようになりました。
現在はそのようなことは全くありません。
「ソーシャルスキルかるた」を通して、毎日毎日の小さな勝負を積み重ねてきたことで、我慢強さが高まってきたといえます。

せなくんのお気に入りの札があります。
「かじやじこ すぐにれんらく 119」
将来の夢は、消防士になることだそうです。

この「119」の札が自分の陣地にあると、「やった!」と喜びます。
「119」を取ることができると、「おっしゃ!」とガッツポーズします。
「119」が取れなかったとしても、笑顔で「残念! 次こそ!」と切り替えます。
かるたを片付けるときは、「119」札を一番上に置いて、大事そうに箱に入れます。
「この『119』の札を作ってくれた会社の人にお礼を言いたい!」
目を輝かせながら、そんなことをつぶやいたこともありました。
「ソーシャルスキルかるた」、そして「119」の札。
きっと、せなくんの心の成長を、これからも後押ししてくれるものと期待しています。


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