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<こだわりの強いあの子…どう対応する?>受容しほめる 促しほめる 笑顔で

相手を快の状態にさせ、こだわりの壁を低くする。


岩手県公立小学校教諭 TOSS銀河TS 田村 治男

「ちゃんと書いているんですね」
 
以前勤務した小学校で、一学期末の個人面談で保護者が発した言葉だ。

支援が必要なAくんは、一学期に2冊目の半分までノートを使った。
毎回日付とページを書き、丁寧に書き続けてきた。

Aくんのこだわりは、大きく2つ。
 
① 自分が簡単だと判断すると「めんどうだから」と暗算で行う。
② その日の学習範囲を知ってから授業を始めようとする。

 
そこで、②については授業開始時に教科書を開いて見せ、今日の学習範囲を知らせてから授業を始めた。

問題なのは、①の方だった。
暗算で行うため、簡単なミスが多くなってしまう。Aくんの自尊感情を下げてしまうことになりかねない。
そこで、「間違えても投げ出さない」という約束をさせ、暗算を認めながら学習を進めた。
間違えても「間違いがあるんだけど分かるかな」とAくんに聞き、見付けられたことをほめた。
 
「正解でも間違いでもほめられる」
 
ことで、Aくんを快の状態に置くことができる。

その上で、「お願い」という形で筆算に少しずつ取り組ませるのである。
Aくんは「仕方がねえな」と言いながら筆算を行い、ノートを持ってきた。それをすかさずほめるのだ。答えの数字一つひとつに丸を付けてほめてもいい。
さらに筆算の丁寧さをほめ続ける。

やがて「筆算はめんどうではない」「筆算のおかげで簡単なミスを防ぐことができる」ということに気付く。


【特徴】
・決められた学習内容はこなそうとする。
・自分が決めたルールを勝手に変えられると不機嫌になり、学習を放棄することが多い。
・嫌なことを強制させられていると思い込むと、下を向いて動かなくなったり机に突っ伏したりすることがある。
・簡単だと自分が思い込んでいる計算は暗算で行おうとするために、計算するのに時間がかかることがある。


NG 対応 「~ しなさい」と、教師のやりかたを通す

Aくんには、自分ルールが存在している。それを教師の都合だけで変えてはいけない。いくら教師の説明が理路整然としていても、本人が納得していなければストレスとなるのである。
過度のストレスは学習を放棄させる。そればかりか、本人が好きで行っていることも嫌なこととなってしまうことがある。

効果のあった対応1 暗算を認め、投げ出さない約束をさせる

「暗算でしてみるのね。分かった。でも間違えたらきちんと直すんだよ」と話し、暗算を認めながら、間違えても投げ出さないで直すことを約束させる。
正解しても間違いを直しても笑顔でほめて、丸を付ける。

効果のあった対応2 筆算も行うよう「お願い」し、ほめる

数問暗算した後で、「この問題は筆算で解いてくれるとうれしいな」と話し、確かめとして筆算を行うことを「お願い」する。1問なら…と思って筆算を行うはずだ。筆算で解いてきたら、丸を多く付け、さらに笑顔でほめる。

効果のあった対応3 筆算の丁寧さを見つけてほめる

筆算で行う場合を少しずつ増やしながら、筆算の丁寧さを見つけてほめる。
数字の書き方や線の引き方など、丁寧さを見つけてほめ続ける。「筆算はめんどうではない」「筆算は簡単なミスを防ぐ」ということに気づかせる。


※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/