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<荒れた中学を立て直した! 人生を変える指導法>ABC分析で問題行動のパターンを見抜こう③

(②つづき)

4.具体的な対応策を考える


その時私が先生方に言ったのは、2つです。

2つのうち、1つは多くの先生方が既に知っていることです。
「定規を使わせてください」です。
LDの子供たちに対応した定規を使わせてください、とアドバイスしたのです。
実物をたくさん持っていたので示しました。たとえば定規の真ん中に、蛍光黄色とか蛍光ピンクとか、ラインが入っているものです。集中したい時は、蛍光ピンクを使ってその部分だけがハイライトされるようになっています。

また、真ん中が細長い凸型になっていて、その部分が拡大される定規も売っています。そのようなサポートツールを使えば学習が楽になる、そういう子供たちもいます。

次です。「『リハーサル』を増やしてください」と言いました。
これは、全ての先生方ができます。

「リハーサル」って何だと思いますか? 本番前にやるのがリハーサルですね。

たとえば、その子に読ませる前に、同じ部分を他の子たちに読ませることです。あるいは、「あなたは明日、2段落目を読んでもらうからね」と前日に言うことです。このリハーサルを増やしてもらえませんか、と言いました。

実際それを模擬授業でしてみたのです。
たとえば、A君が2列目の前から3番目に座っているとします。
「列読みをします。1列目は1段落、2列目は2段落を読みます」
A君は、前の2人が読んでいるのを耳で聴きながら練習をして、それから本番に臨めますよね。このように教師の指導を変えてもらうのです。すると、どうなると思いますか。

ひと月後の授業で、A君は、周りの子供と同じように国語の授業を受けていました。音読も避けずに行って、褒められていました。
ならばこのケースで悪かったのはA君ですか、という話です。これが特別支援の根本です。
 
こちらが対応を変えて、あちらが変わるのです。
こちらがあちらの特性に合わせるのです。

 
問題行動とは何か。それは本を読めば分かります。現場の課題は、実際に指導をどうするのか、です。

だから、たとえばこのABC分析を使ってみるといいのです。使うとパターンが分かる。パターンを見つけるために不適応な行動を記録する。書くことで見えてくるものがあります。

是非、試していただけませんか。指導改善のきっかけをつかめると思います。
 

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LDの指導については鳥取大学の小枝達也氏の研究・指導法が参考になる。
小枝氏はRTIモデルによるLDの早期発見と、音韻処理能力の向上によるLDの指導について研究をしている。

特に小学校低学年段階において、この方法を実施し、LDの早期発見、早期療育につなげることが望ましい。

また、大阪大学大学院(当時)の和久田学氏は、アメリカで実施されているLD用の教材について研究を進めている。これらのような研究についても教師が学び、目の前の子供たちへの指導法として還元させていきたいものである。
 
今回はディスレクシアの事例を紹介した。

では、学習障害ではなく、反抗挑発症や行為障害(非行)の児童生徒に対してはどう対応するか。

ABC分析はここでも有効である。先行条件と結果を推定して臨んだ方が、行き当たりばったりの事後的指導を繰り返すよりも、指導の質が向上する。

まず、生徒の情報と指導方法の共有がしやすい。

次に、問題行動のパターンを明確化することで指導に優先順位がつけられるようになる。

そして、このような意図的計画的な指導であればこそ、検証に堪える記録が蓄積され得る。指導の記録をもとに、より有効な指導を模索することもできる。

ABC分析には「慣れ」も必要である。サークルの事例検討等で用い、回数を重ねると分析内容も的確になっていく。

私もそうしている。
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長谷川 博之
NPO法人埼玉教育技術研究所代表理事。TOSS埼玉志士舞代表。日本小児科連絡協議会「発達障害への対応委員会」委員。全国各地で開催されるセミナーや学会、学校や保育園の研修に招かれ、講演や授業を行っている。また自身のNPOでも年間20回ほどの学習会を主催している。


※この記事は2015年10月1日発行の『TOSS特別支援教育 創刊号』に掲載されたものの再掲です。
一部、名称等が当時のものになっていることがありますこと、あらかじめご承知おきください。

※この記事へのお問合せはTOSSオリジナル教材HPまで。
https://www.tiotoss.jp/